2014年9月9日

ジャカモコジャン


 中秋の名月の昨夜、八郷柿岡の八幡宮で神楽が奉納された。これは「八幡宮太々神楽」というもので、地元では「十二面神楽」とか「ジャカモコジャン」といっている。文禄4年(1595年)に佐竹の長倉義興が柿岡城主になったとき、奉納したのが始まりといわれている。昔は、周辺の旧八幡町に永住する長男だけしか参加出来なかったそうだ。
 

 神楽は、午後7時から始まり、11時過ぎまで続く。その間、ずうっと八郷盆地に、「ジャカモコジャン」と笛太鼓の音が響き渡るのである。昔の人は、秋の夜に遠くから聞こえてくるこのリズムに心を躍らせたのだろう。そして祭の名前になった。
神楽は、十二の面にしたがい、国堅、老翁、種稼・天狐、龍神、地法・赤鬼、神酒の舞、西宮大神、鈿女、岩戸、戸隠、猿田彦、山の神と、神話の世界を舞う。舞いは、威厳に満ちて品格があると思えば、ある場面ではユーモラスであったりエロチックであったりと、長い時間にもかかわらず飽きることはない。いつの間にか、古代の人々と一緒に楽しんでいる気分にすらなる。


 この祭のもう一つの主役は、子供たちだ。神楽の間に、着飾った10歳前後の少女たちによる神子舞が三回ほど挿入されて彩りをそえる。この小さな巫女たちは、実に可愛い。4時間もの長い神楽の間、舞台の上でずうっと座って自分たちの出番を待っている健気さには感心した。終わり近く、思わず居眠りがでてコックリしはじめたのも、また、可愛い。大人だって、あの神楽のテンポとジャカモコジャンの中に4時間も浸っていれば眠くなる。舞台の脇では、小さな女の子が、天照皇大神の動作をまねて一緒に踊っていた。老翁が印を切った様子を見て、男の子が「ママ!おじいさんが投げキスをしてるよ」を話しているのには、微笑ましかった。今夜、この子供たちの、心の奥深くには、きっと何百年、何千年も続いて来た「ジャカモコジャン」のリズムが刻まれたことだろう。それが、大切なのだ!