2015年4月30日

オドリコソウの花

めずらしく早起きして庭を歩いていたら、オドリコソウの花が群がって咲いているのを見つけた。これまで、外来種のヒメオドリコソウばかりだったから嬉しい発見である。清々しい緑の葉の間から清楚な白い花を覗かせている。屈んで見ると、確かに名前の通り、白い手ぬぐいで頬かぶりして花笠をがぶった娘たちが、茎を中心に輪になって踊っているようだ。手拍子を打っている白い手首を前に差し出しているようにも見える。うっすらと化粧もしている。可哀想だが、その内の一人をつまんで引き抜き、花の根元を吸ったらかすかに甘かった。これは昔からの子供達の遊びだ。花の上部には、蓋のような大きな花弁があって、内側に雄しべついている。昆虫が花の奥の蜜を吸おうと潜ると花粉が背中にくっつく仕組みになっているのだろう。また、その蓋のような花弁が、蛇が大きな口を開けた形に似ているので、この草は「ハミ(食み)」とも呼ばれていた。蛇が集団で鎌首を持ち上げているよりは、踊り子の方が「ズッ〜ト、ズッ〜〜〜ト」いい。


2015年4月15日

雨樋のスミレ


 久しぶりの晴天。デッキでコーヒーを飲んでいて、頭上の雨樋の中にツボスミレが咲いているのを見つけた。確か昨年も咲いていたから、同じ株が今年も花を付けたのだろう。ツボスミレは、漢字で書くと「坪菫」で「庭のスミレ」の意味である。どこにでも生えていそうだが、案外、都会では少ない。ニョイスミレとも言う。これは葉っぱの形が仏具の如意に似ているからだそうだ。そういえば、可愛いハート形している。
 「昨年も咲いていた」とは、この一、二年間、雨樋の掃除をしていないということである。いっその事、このままにしておいて、どんな植物が生えてくるか試してみようと思っている。新たな植物を発見する喜びに比べたら、雨水がボシャボシャと溢れ落ちるなんて、たいしたことではない。


2015年4月2日

ハンモック日和

先日、子どもたちが小屋に来るというので、今年初めてハンモックを吊るした。今日は何の予定もない。本を抱えてハンモックに乗った。横になって空を見上げると、青い空に白い雲。真上のウワミズザクラは芽吹いたばかり、初々しい若葉に陽が当たっている。まだ、ホオノキの蕾は固い。隣の杉林からは、ヤマガラの鼻にかかった鳴き声がする。早くもシジュウカラが囀っている。先ほどからパラパラと木屑を落としているのはコゲラだ。

 僕はハンモックが大好きだ。ハンモックはとても気持ちがいい。子どもたちが喜ぶのはもちろんだが、大人にとっても実に楽しい。以前、小屋に遊びにきた客は、到着早々にハンモックに横になったまま帰宅時間まで眠り込んでいた。

 これからずうっと天気の良い日は、昼も夜も、この上で生活したいくらいだ。しかし、残念ながら、もう少したつと蚊が出現する。蚊はハンモックの快適さを一挙に壊す。今のうちにたっぷり楽しんでおこう! 山桜が咲いたら、桜の下にハンモックをつるそう! ハンモックから揺れながらの花見だ。すでに、どの木とどの木の間に吊るすかは決めてある。


スプリング・エフェメラル

 

 庭の片隅に植えたまま、すっかり忘れていたニリンソウの株が、いつの間にか増えて花をつけていた。深い緑の葉の中に、白い花がひっそりと咲いている。蕾の外側がほんのりと赤みを帯びて可憐だ。この花が、山の暗い谷間に敷き詰めたかのように咲いていて、足の置き場に困ったことがある。ニリンソウやカタクリは、まだ木々が葉を出さず林床まで日差しが届くわずかな期間に、花を咲かし、実を結び、栄養を蓄えてその年のサイクルを終える。このような植物を「スプリング・エフェメラル」という。「春の妖精」とか「春の儚い命」と訳されている。一年でほんの2ヶ月ばかりの間だけ、地上に現れた森の「妖精」は踏み潰せない。