2016年8月7日

サルスベリの咲く風景


 
 花の少ないこの季節、田舎道を走っているといたるところでサルスベリの花を目にする。カッと照りつける真夏の太陽のもと、濃い緑の生垣の間から、赤、ピンク、白色の花がのぞいている。僕はこの花が好きだ。小屋の庭にも、真っ赤なのと白に赤い縁取りのある可愛い花を咲かせる二種類を植えた。夏目漱石もこの花が好きだったとみえて、いくつも俳句に残している。

「百日紅浮世は熱きものと知りぬ 」
「杉垣に昼をこぼれて百日紅 」
「先づ黄なる百日紅に小雨かな 」

 以前から、この花をじっと眺めていて、真夏に咲く花としては、どことなく寂しげであると思っていた。最近知ったことだが、やはりこの花には悲恋物語があったのだ。なんでも昔々のこと、朝鮮半島の寒村で人身御供にされそうになった娘を若い修行僧が助けた。二人は恋仲になり、修行が開ける百日後に迎えに来ると約束して別れた。しかし、娘はそれを待たずして病で死んでしまった。すると、その娘の墓から一本の木が生えてきて、百日の間、可憐な花を咲かせたそうである。サルスベリは、「百日紅(ひゃくにちこう)」とも書く。

 写真は、旧出島村のどこかだったと思う。僕はこのような「何でもない、ごく普通の」風景が好きである。でも、なかなか撮影は難しい。

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