2016年11月26日

集落のおばあちゃんたち



 久しぶりに澄んだ空の今日、Kさんのおばあちゃんが門前で銀杏を乾していた。銀杏は、その名前の通り秋の陽を浴びて美しく銀白色に輝いていた。僕が、呑気に「きれいですね!」と声をかけたら、おばあちゃんから「粒の悪いのを除くのが大変で・・・」と返って来た。イチョウを育て、ここまで見事な銀杏を収穫するまでには大変な手間と苦労があったのだろう。

 
 Kさんの家の100mほど南に、同じ苗字のおばあちゃんの家があって、大きな茅葺民家に一人で住んでいる。いつ行っても、物置の軒下で、「しめ縄」を編んでいる。よく初詣などで神社に行くと、ぐるっと境内を囲んでいるあのしめ縄である。専用の稲藁を使って、七目ごとに四手を下げる特殊な編み方をしている。清々しい稲藁の香りがあたりに漂っている。秋の日差しが物置の奥まで届いて、黙々と一人で編んでいるおばあちゃんを優しく照らしていた。

 僕が、この地に小屋を建てたのも、これらのおばあちゃんから、ここに住むことを勧められたのからである。お茶をご馳走になりながら、「ここは特別なところで、あの家もこの家も夫婦揃って90歳になっても元気だ」「ぜひ、夫婦で越して来て住んだらいい」と言われた。確かに、この集落のお年寄りは、元気な人が多い。
 最近になって、この「特別なところ」の秘密が少し解ってきた。それは、水でも空気でも桃源郷のような風景のせいでもなく、単にお年寄りの皆さんがよく働き、よく動いていることにつきる。写真の銀杏を乾しているおばあちゃんなど、90歳をとっくに超えている。おじいちゃんも元気だ。

 僕みたいに、ただこの土地に住んでいるだけで、村のお年寄りのようになれるというのは甘い。



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