2016年5月15日

やさとの「こんこんギャラリー」にて



 賑わう企画展の「こんこんギャラリー」も楽しいが、今日のように落ち着いた雰囲気のメンバー展も気持ちがいい。デッキにいると若葉を揺らした風が通り過ぎてゆく。新鮮な空気を肺の奥の奥まで届けようと、思い切り深く呼吸した。

 この「こんこんギャラリー」は、約15年前に、八郷の「ものつくり」のメンバーが、作品を展示する場所として、またコミュニティーの拠点として、地域の協力を得ながら力を合わせて手作りしたものである。今では、当初の目的を立派に果たしているばかりではなく、やさとを象徴する建物となっている。ここに来れば、工芸品や芸術品から有機農業の野菜まで、生活を豊かにする衣・食・住のすべてに出会える。出会えるのは「もの」ばかりではない。直接、作品の作家と会って、その感性や思想にも触れることができるのである。やさとの「精神」にも出会えるのである。僕は、このような場所を他に知らない。
15年を経た建物の木材は適度に色褪せて、柱には蔦が絡まり、周りの木々も大きく育って、すっかり周囲の里山の風景に美しく溶け込んでいる。

 しばらくして、注文したコーヒーが運ばれてきた。今日は、特別にTさんの手作りのケーキと「いちごジャム」が付いている。種子島洗糖を使ったジャムだ。コーヒーの苦味に、いちごの甘い香りが引き立つ。

 今日も、素晴らしい一日になる予感がする。





2016年5月4日

羊歯愛

 性格によるものとは思えないが(笑)、わりとシダ(羊歯)が好きである。深い緑色の小葉が、数学的な几帳面さで並んでいる形や、春先に地面からムクムクと毛むくじゃらの首を盛り上げてくる姿などがたまらない。原始的な生命力を感ずる。それに、日陰が多い僕の山小屋でもよく育ってくれる。すでに、アジアンタム、アビス、シノブやその他2、3種類の鉢があって、いつでも何かがテーブルの上を飾っている。夢は、ヘゴのような超大型の木生シダの下で暮らすことである。そう!恐竜のように。



 昨日、山歩きイベントの下見に、Y氏と柴内集落の上の森の中を歩いた。途中、林道の脇で何箇所も見事に茂っているウラジロの群落を見つけた。ウラジロは、ちょうど新しい芽が伸びたばかりで、翼のように広げる一対の(葉)の付け根のところから、初々しい色の(茎)が伸びて、頂上でさらに二つに枝分かれしている。先端がくるくると丸まっているのも可愛い。名前の通り裏側が白い。
 ウラジロは、暖地性の大型のシダで、お正月の鏡もちの上にミカンを乗せて飾られているシダといえば知っている人も多いだろう。これは、冬でも緑色を保っていて、葉裏が白いことから「共に白髪になるまで」と長寿を祝い、形が何世代も重なった子孫繁栄を象徴しているからだ、と言われている。実におめでたいシダなのである。
 来年のお正月に飾りたい人は、近くの山を探せばきっと見つかると思うよ。