2016年8月28日

『山の園舎の中庭マーケット』



 八郷は、奈良時代には常陸国国府で使う屋根瓦などの建築資材や碗、祭器、織物などの生活用品を生産していた。現在でも、陶芸、木工、編み籠、織物、ガラスなどの工芸家やアーティストが多く住んでいる。人口比だったら、日本一の地域かもしれない。

 すでに、10年以上も前から、『こんこんギャラリー』が、この地域の拠点になっていることを紹介したが、さらに新たな動きが加わった。本日、旧ほしのみや幼稚園で開催されている『山の園舎の中庭マーケット』である。
 若い作家たちが、様々なワークショップを行っていた。フランスパンやお茶の店も出ている。加波山麓の緑豊かな場所で、元幼稚園の広いスペースを使って、いかにも八郷らしい「のんびり、ゆったり」した空間が生まれている。耳をすますと、近くに流れる谷川の水音が聞こえてくる。

 今回は、初めての試みだそうで、こぢんまりとしたものであったが、モノ作りの面白さや表現することの楽しさを、誰もが、特に子供たちが体験出来る機会として、これからもずっと続けて欲しい。



2016年8月15日

真家の「御霊おどり」から帰って







 先ほど、ずうっと前から、ぜひとも見たいと思っていた真家(やさと)の「御霊おどり」の見学から帰ってきた。これは平安時代の末期から、この地区に伝わっている念仏踊りで、古い盆踊りの形を残しているとも言われている。
 毎年、旧盆の十五日に、あの世に旅立った御霊と現世の人の心が踊りを通じて通い合うというものである。写真の編笠から垂れたヒラヒラは「オゴマ」と言って、仏(死者)をあらわす。それに混じって、現世の老若男女が踊るのである。昔は、夜を徹して踊ったというから、夜が更けるとともに、あの世ともこの世ともつかない幽幻な世界が現出したことだろう。もちろん、無形民俗文化財(県)に指定されている。

 今年の踊り手は、4、5十名はいただろうか。大人に混じって小さな子供達が一生懸命に踊っている。その姿が実に可愛い。このあと、新盆の家三件と地区にある寺三箇所を巡るそうだ。暑くならなければいいが・・・。

 山麓にある明圜寺の深い緑の木々や、苔むした石畳を背景に、色鮮やかな衣装がよく映えていた。このような美しい民俗が800年以上も連綿と続いてきた八郷は、本当に素晴らしい。そして、子供達がしっかりと引き継いでいることも。



2016年8月7日

サルスベリの咲く風景


 
 花の少ないこの季節、田舎道を走っているといたるところでサルスベリの花を目にする。カッと照りつける真夏の太陽のもと、濃い緑の生垣の間から、赤、ピンク、白色の花がのぞいている。僕はこの花が好きだ。小屋の庭にも、真っ赤なのと白に赤い縁取りのある可愛い花を咲かせる二種類を植えた。夏目漱石もこの花が好きだったとみえて、いくつも俳句に残している。

「百日紅浮世は熱きものと知りぬ 」
「杉垣に昼をこぼれて百日紅 」
「先づ黄なる百日紅に小雨かな 」

 以前から、この花をじっと眺めていて、真夏に咲く花としては、どことなく寂しげであると思っていた。最近知ったことだが、やはりこの花には悲恋物語があったのだ。なんでも昔々のこと、朝鮮半島の寒村で人身御供にされそうになった娘を若い修行僧が助けた。二人は恋仲になり、修行が開ける百日後に迎えに来ると約束して別れた。しかし、娘はそれを待たずして病で死んでしまった。すると、その娘の墓から一本の木が生えてきて、百日の間、可憐な花を咲かせたそうである。サルスベリは、「百日紅(ひゃくにちこう)」とも書く。

 写真は、旧出島村のどこかだったと思う。僕はこのような「何でもない、ごく普通の」風景が好きである。でも、なかなか撮影は難しい。