2017年2月27日

山寺の春



 今の頃、どこに行っても梅の花が美しい。たくさんの木が一斉に咲いている梅畑もいいが、土手の片隅などに1本だけ咲いているのもいい。そんな梅を見に散歩に出た。
ちょうど、Facebookで、真家の明圓寺の梅が見頃とあったので見に行った。苔むした参道の脇には白とピンクの梅が今を盛りに咲いており、隣にまだ実が残っているフクレミカンと鮮やかに対比していた。それに真っ赤なヤブツバキの花が加わり、早くも春の賑わいが感じられた。



 この明圓寺は、僕の好きな寺の一つである。山門に向かう石畳の参道を歩いていると、自然と清々しい気持ちになる。明圓寺は、難台山の山麓にある比較的小さな寺であるが、1240年(仁治元年)の開山というから相当に古い。寺を開いたのは、親鸞聖人の第19輩の弟子である明法坊である。この人の元の名は、山伏・弁円といい、八郷の板敷峠で親鸞聖人を襲って殺そうとしたが、逆に感化されて改心して弟子となった人である。親鸞聖人は、お隣の稲田の西念寺に約20年も住んでいたので、布教などで八郷も度々訪れたのだろう。八郷にはその足跡がいたるところにある。

(ついでに、ちょこっと宣伝)
 春といえばといえば、3月2日(木)に、僕の小屋の近くの『 BookCafe えんじゅ』にて『ひな祭り茶会』が開かれます。「茶会」といっても、誰でも気楽にお菓子を食べてお抹茶が飲める機会ですから、ぜひ、お越しください。
 また、会場では、着物の貸出しや着付けの指導などもあって、着物好きや関心のある方も、きっと楽しい時間を過ごせると思います。
詳しくは https://www.facebook.com/enzyuan/ をご覧ください。




2017年2月22日

「仙郷」の倶利伽羅不動尊




 集落を見下ろす近くの高台に梅を見に行ったついでに、その麓にある「お不動さん」をお参りした。これは先日、近くに住む人から教えてもらったものだ。丘陵の中腹に祀られている不動尊は、周囲がよく掃き清められおり、剣の供物なども供えてあって、現在でも厚い信仰が維持されている様子がうかがえる。石仏の刻字は磨耗して読めないが、風化の具合から、かなり古いものらしい。像は倶利伽羅龍(クリカラリュウ)が、利剣に巻きつき、今にも飲み込もうとしているもので、いわゆる倶利伽羅龍王の像である。八郷では初めて見るものである。倶利伽羅不動尊は、「水神」として水辺近くに祀られることが多い。ここも近くに細い谷川が流れているから、そうかもしれないが、不動尊の目の前の丘陵が、中世時代に佐竹の要害(砦)のあった場所であるから、むしろ、それとの関係があるのかもしれない。

 さらに、林の奥に進んだら、狭い谷津の先端の「こんなところに家が?」と思うようなところに一軒家を見つけた。突然訪れたにも関わらず、好々爺然としたおじいちゃんと家族が親切に対応してくれて、昔の筑波山参拝道の話や山向うの集落のこと、日頃の暮らしぶりなどをたっぷり聴かせてくれた。聞いたら、おじいちゃんは93歳だという。この山の中から外に出ることは、ほとんど無いという。まるで仙人である。
 もしかすると、八郷は、本当に「仙郷」かもしれない(笑)。隣のおじいちゃんなどは、100歳を超えても元気に畑仕事をしている。



2017年2月17日

陽だまりの椅子



 庭のあちこちに椅子が置いてある。これは、陽だまりを追いかけて、あちこち移動するためである。このところ朝起きると、コーヒーカップを片手に、どこかの椅子に座って読書するのが習慣になっている。

 強い日差しに疲れて、目をつぶると、まぶたに赤い光が溢れる。春の暖かさを身体中に感じる。今年は春の足が早いせいか、もう頭上では小鳥たちが囀り始めている。こんな時は何も考えないし何も思わない。過去の出来事や未来のこと、世の中のことも。ただ、ただ、自分自身の今に集中する。実在しない過去やどうなるか分からない未来を悩んだり心配することで、この瞬間の豊穣さに気づかないなんて、全く馬鹿げている。