2018年8月2日

お隣集落の別世界




 知人が、小屋の近くで売りに出ている古民家があると教えてくれた。その写真を見ると、これまで見たこともないような美しさなのだ。まったく心当たりが無い。ぜひとも実物を見たくて、早速、探すことにした。しかし、いくら集落を歩いても、それらしい建物は見当たらない。諦めて引き返そうとして、両側から木立が迫る細い脇道に入ったら、その先で、突然、ケヤキ、杉、ヒノキなどの大木に囲まれた屋敷が広がり、よく手入れされた庭と重厚な母屋が現れた。

 ここは別世界である。静寂さがあたりに漂っている。家の中はどんなだろうかと思っていたら、ちょうど、母屋からM氏が現れて、快く家の中へ招き入れてくれた。広い土間の上には、赤松の梁が何重にも重なって組まれ、そこに天井の明かり窓から光が射している。柱は、どれも見事に黒光りしたヒノキやケヤキ材である。聞いたら130年は経ているという。部屋の周囲は、二重の一枚ガラスで囲まれていて、外からの柔らかい光が静かに畳の上で揺らいでいる。壁面が天井まで書架となっている書斎も素晴らしい。風呂、洗面所などの水まわりも見せてもらったが、どこもかも清潔で清々しい。床の間のある和室などは、凛とした美しさである。僕は、これほどまで完璧にリノベーションした例を他に知らない。

 M氏と、この家のこと、八郷の暮らし、美味しい食べ物、老後のこと、家族のことなどをコーヒーをいただきながら楽しくお喋りした。それが心地よくて、気がついたら2時間も長居してしまった。やはり、ここは時間を超越した別世界である。




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