2010年2月27日

夜の小鳥

 夕べの午後9時過ぎのこと。外は、夕方からの雨が激しく降り続いている。枯れた笹の葉に強い風が吹き付けると、暗闇がざわざわと音を立てる。そんな様子を窺おうと、小屋のドアを開けたら、一羽のジョウビタキの雄が、すぐ目の前の軒先で必死に羽ばたいていた。弱っているのかと思って、手を差し伸べたら、手のひらに止るではないか。部屋に入れて、何か餌になるものを与えようと思ったとたん、雨の降る闇の空に飛び立っていった。
 このことは、僕をひどく不安にさせた。いま、身内の誰かが死に掛けており、小鳥に形を変えて僕に会いにきたのではないかという思いがよぎったからである。ずっと昔、僕が子どもだった頃、じいさんの臨終のときも小鳥が病室に迷い込んだし、僕を可愛がってくれた近所のおばあさんが病気で寝ていた部屋にハトが入り込んだからといって、自ら捕まえて持ってきてくれた。ところが、その晩に、そのおばあさんは亡くなった。こんなことがあったからだろう。「死者は小鳥になって、会いたい人のところに飛んで行く」ものと、すっかり心の深いところで信じてしまったようだ。
 その後、思い当たるところに、それとなく様子を聞いたり急いでメールをチェックしたが、該当しそうな者はいないと判って一応落ち着いた。
 今夜も、この時間になったら思い出してしまった。

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