2012年12月30日

キクイタダキ

これでは、何の写真だか解らないだろう。写真をクリックして拡大し、黒いアンテナの前に止まっている小鳥に注目して欲しい。今朝、雨が上がった庭を眺めていたら、植え込みの中で「チッ、チッ」という鳴き声が聞こえて、とても小さな鳥がせわしなく動いている。下を向いたとき、頭の上に黄色の模様がチラリと見えた。キクイタダキ(菊頂)だ。それも雄らしい。平地では、なかなか見られない鳥である。バードウオッチャーの憧れの鳥でもある。キクイタダキは、日本で最小の鳥の一つで、体重も数グラムしかない。本州中部から北海道の亜高山帯の針葉樹林で繁殖して、冬になると低地に移動してくる。名前の通り、雌は頭頂に二本の黒線に挟まれた黄色の線があり、雄は、その真ん中に橙色の線が入っている。でも、この模様を野外で見るのは、ものすごく難しい。小さい上に、動きが激しく、じっくり見せてくれることは無いからだ。

 植え込みの下には、珍鳥ハンターのピーが今にも飛びかかろうとして身構えていた。あいつに捕ってきてもらえば、もっとハッキリするのだけど、それも可哀想だ。大きな声で、「ピー!駄目だ!」と制したら、「どうして?」という顔をして振り向いた。



2012年12月29日

神話の現場


 先日の朝日デジタルにピアニストの斉藤美香さんが、今月の初め陣場山の山頂近くで撮影した不思議な森の写真が掲載されていた。
斉藤さんは、「鳥肌が立つほど美しい色でした。近寄ってみると、その虹の輪は二重に見え、大きくなった」と言っていた。そうだろう。もし、僕がこんな光景に遭遇したら、なにものかを畏れて、地面にひれ伏してしまうかもしれない。
 記事では、山頂などに発生するブロッケン現象だとあった(本当かな?)。ブロッケンだとすると、森の中とは珍しい。この現象は、ドイツのブロッケン山でよく見られた事からこの名前がついた。「ブロッケンの妖怪」とも言われる。日本では、ご来迎、後光(御光)とも呼ばれて、阿弥陀如来が空中住位の姿で現れたものとされている。そのせいか、昔から、槍ヶ岳、剣岳など、この現象がよく現れる山は、山岳宗教で有名になっている。実は、昔のむかし、僕も苗場山でこれを目撃した事がある。激しい雷雨の後、突如、雲間から射し込んだ陽の光が、何かの影を空中の雲に投影したのだ。その姿は、とてつもなく巨大で、二重の虹の輪が周りを取り巻いていた。そのときの驚きと感動は今でも忘れられない。すぐ近くの筑波山でも、稀に出現することがあるそうだから、ご縁のある方は出会えるかもしれない。妖怪か阿弥陀さまかは知らないが。


2012年12月27日

猿壁城に登る



  以前から猿壁の山に登ってみたいと思っていた。ここは、中世の頃、猿壁城という山城があった場所だ。足尾山から張り出している尾根の先端にあって、八郷盆地に突き出ているような形をしている。その東斜面が急な崖になっていて、八郷の人なら、誰でも知らない人はいない。先日、船橋さんのログハウスを見学に行ったとき、その背後にそそり立っている猿壁を間近に見て、ますます登りたくなったので、今日思い立って出かけた。ログハウスの屋根の上で作業している彼らを横目に見て、林道を更に進んだ。泉のところに車を止め、頂上を目指して登った。昔は、集落と集落を繫ぐ峠道があったののに違いない。わずかな地面の凹みが、昔は山道だったことを示している。遠くからログハウスの屋根を打っている音が聞こえる。
 植林の中を20分ほど直登すると、山頂近くになって、明らかに人手による堀跡が現れ、やがて土手のようなものが行く手に立ちはだかり、そこを越すと次はすこし平らな場所に出た。どうやら、堀は、山城の「堀切」で、土手らしいものは土塁、平らな場所が館跡(「主郭」)らしい。規模は思ったより小さいが、土塁と堀切、そして平らな場所と切通しと、複雑な構造をしている。『八郷町史』によると、この猿壁城は、戦国時代の頃、小田氏の一族である上曽氏の城だという。この城は、非常時に逃げ込む山城との見方もあるが、二重の堀切や、そのテクニック、構造から、より大きな軍事行動を行う集団の城と解釈できるともあった。当初は、ここからの眺望を期待して登ったのだが、周囲はヒノキや杉の植林で遮られて実現しなかったものの、中世の遺構が比較的良い状態で残っていたので、十分満足して帰路についた。

 ところが、いざ、車を車道にバックしようとした時、泉の水を流す側溝にタイヤを落としてしまったのだ。どうしても出ない。困り果てて、とうとう小田島さんに救援の電話をしてログハウスで作業している全員に駆けつけてもらい、やっとの事で溝から引き出してもらった。これは、数百年の間、静かに眠っている武士たちの場所に勝手に立ち入ったことの罰かもしれない。でも、考えようによっては、ほとんど人の通らない山道であるにも係らず、丁度、近くで知り合いの皆さんが作業していて、しかも、お昼休みで屋根から降りていて、携帯電話がちゃんと小田島さんに届いたなんて、これは相当にハッピーなことともいえる。助けていただいた皆様、本当にありがとうございました。




 

2012年12月24日

馬とログハウス


来年の春から、八郷がますます魅力的な場所になりそうだ。今日の午後、小田島さんを訪ねたら、近くで建設中のログハウスの現場を手伝っているというので、さっそく、僕もそこに向かった。このログハウスは、この春からログハウスビルダーの中村哲思さんが仲間たちと建てているもので、オーナーは、船橋さんである。船橋さんは、前から八郷の山麓で馬を飼っていて、乗馬姿がよく似合う人だ。以前に、二人が狢内の林から杉を伐採して、水圧で皮を剥く作業をしているところを見学させてもらったことがある。その時も、太い丸太の量に驚いたので、今度は、それが、どのように建物として形になって行くのかを是非とも見たかったのだ。足尾山の中腹にあるハンググライダーの着地を過ぎて、森を抜けると、その建物はあった。太い杉の丸太が幾重にも重なり、巨大とも思えるログハウスが、陽の光に白く輝いていた。垂木の上で何人かが作業をしている。建物を囲むように馬場が広がっていて、4、5頭ほどの馬がのんびりと歩き回っている。裏の方から、ヤギの鳴き声も聞こえる。振り返ると、はるか遠くに山並を背にした柿岡方面が見渡せる。反対側は、足尾山から連なる猿壁山の特異な姿が屹立している。なんと清々しい所だろう!なんと明るい場所だろう!

 船橋さんは、来年の春に、ここにホース・セラピーを開くことを計画しているそうだ。来客者に、馬や動物と親しみながら、お茶を飲んだりして、ゆったりとした時間を過ごしてもらうという。きっと、美しい八郷の風景と優しい動物たち、そして素敵な人たちが、現代人の疲れた心を癒してくれるだろう。今から、すごく楽しみである。






2012年12月9日

ユズ柚餅子とリュウキュウスズメウリ

山小屋の壁に、二つのものをぶら下げた。一昨日、笠間のTさんからいただいてきた「ユズ柚餅子」と、今日、しがさんからいただいた「リュウキユウスズメウリ」の実である。Tさんは、毎年この季節になるとユズ柚餅子を作る。僕がお店を訪れたとき、運良く、丁度調理済みのユズの実を半紙に包む作業の最中だった。このユズ柚餅子は、ユズの中身を繰り出して、代わりに味噌とクルミなどの木の実と小麦粉や米粉を練った餡を入れ、丸ごと蒸したものある。それを半紙に包み、風通しの良いところで3ヶ月以上の間、寒さに晒して熟成させると独特の風味が醸し出されて美味になる。薄く切って、おかずやお茶請け酒のつまみにすると最高だ。これで、この冬の楽しみが一つ増えた。


久しぶりにしがさんのところを訪ねて、帰りにリュウキュウスズメウリのリースをいただいてきた。しがさんが種を蒔いて庭で育てのだそうだ。濃い緑の地に真っ白なストライプ。もう、これだけで可愛いクリスマスのリースになっている。なんでも、育つ条件によっては、真っ赤な地に真っ白のストライプにもなるという。これもまた綺麗だ。さっそく、貰ってきたリースを山小屋の銘板に掛けてみた。来年は、僕も種子を採取して育ててみようと思う。


 そうそう、冬の楽しみと言えば、今夜、このシーズン初めて薪ストーブに火を入れた。これも、冬の大きな楽しみの一つ。


2012年12月3日

隠れ里のギャラリー







現代的なつくば市の街から車で30分のところに、こんな場所があるなんて奇跡かもしれない。最近開通したトンネルを抜けて辻の信号を左に曲がり、山に向かって進むと、道は脇に谷川の流れる薄暗いヒノキやスギ林の中に入る。果たして、この先に家があるのだろうかと心細くなりかけた頃、突然、谷は開けて小さな集落が現れる。入口の小高い丘の上には社が祀られていて、この集落に侵入する者をじっと見下ろしている。ここは八郷の隠れ里というべき中山集落だ。狭い谷間に点在する民家の庭には松や柘植、椿などが植えられ、その木々の間から、白壁に黒い柱の真壁造りの民家と蔵が見え隠れする。道に沿って、清冽な水が音を立てて流れ下っている。ある種の感性を持つ者なら、ここが特別な場所だとわかるだろう。

 最近、この集落に、Tさんが里山ギャラリー『野遊』をオープンしたと聞いて訪ねて行った。丁度いま、オープン記念として野鳥を描いた竜雅さんの個展『瞳と存在の空間』を開催しているはずだ。(個展は12月10日まで)

 ギャラリー『野遊』は集落の家並みを過ぎたあたりにあった。田んぼの向こうに鮮やかなカエデやコナラの紅葉に埋もれて黒褐色の瀟洒な建物が見えたのですぐわかった。池の縁を巡って入口のドアを開けると、部屋は南と西側の大きなガラス戸から射し込む秋の光で溢れていた。窓からは、黄褐色に染まった周囲の山肌が見渡せる。戸外のテラスの先には、裏山から流れこむ水を溜めた池があって、カエデの落葉がたくさん浮かんでいる。絶えず池に落ちる水の音が、山里の静寂を一層引き立てている。

 カエデの葉が落ちきらない内に、この隠れ里を訪れることをお勧めしたい。


2012年11月26日

加波山の秋

昨日、筑波山ファンクラブの定例観察会で加波山へ登った。これまで、この山は何度も計画されているが、どういう訳か、途中で天候が悪化して、なかなか頂上までたどりつけないことが多かった。今年の春などは北条の竜巻にも遭遇した。ところが、昨日は穏やかな小春日和の天気で、山頂を踏破(笑)できたのはもちろん、ブナの結実調査までできた。途中の山道は黄葉や紅葉が真っ盛りで、澄み切った青空を背景にカエデの仲間やブナ、ヤマウルシやコアジサイ、コナラやシデ類などの木々が美しく映えていた。この季節、落葉を蹴散らしながらの山歩きは実に楽しい。
 その後、若い人たちと一緒に、筑波山へ夜景を見に行った。今回の夜景鑑賞には、街の灯りの他に、夜空の明るい月と懐中電灯に反射したムササビの双眼の光が加わった。

2012年11月20日

Kindleを入手

昨日、Amazonの『Kindle paperwhite 3G』が届いた。日本版の発表と同時に申し込んだので、発売日当日に入手出来たのだ。今からだと来年になるらしい。
 さて、その使い心地を試すために、池波正太郎の『鬼平犯科帳』(368円)と高神覚昇の『般若心経講義』(無料)をダウンロードして読んでみた。なかなか具合がいい。文庫本のように片手で持って読めて、E-inkの画面と綺麗なフォントのせいか眼が疲れない。軽くて小さいので何処にでも連れて行けそうだ。おまけに、どこにいても簡単に本が入手出来る。とくに僕が一番嬉しいのは、カビのように増え続ける紙の本から解放されることだ。
 いよいよ、今年は電子書籍の本当の幕開けになるかもしれない。だからといって、この先、紙の本が無くなるとは思えない。むしろ紙の本は贅沢品になるだろう。でも、つまらない本ばかり並べて安住している地方の書店は、経営がますます苦しくなるだろうなぁ。

今朝の山小屋


今朝の山小屋。小春日和の日差しが美しい。カツラ、ホオノキ、ヤマボウシの葉も、昨日の風でほとんど落ちた。ヤマガラ、コゲラ、シジュウカラ、エナガの群れが枝から枝へ飛び回っている・・・・・。
 こんな穏やかな気分に浸っていたら、不動産屋が客をつれて小屋の上の土地を見に来た。この土地は、周りが林に囲まれた眺めの素晴らしいところだ。夜になると野生動物の運動場になっている。僕としては、いつまでもこのままであって欲しいが、もし、誰かの手に渡るとするなら、せめて、美しい自然を理解できる人で、この静かな場所に相応しい使い方をして欲しい。これからの展開がとても気になる。これもトンネル開通の影響かな?

2012年11月15日

ブナの結実調査


 
 昨日から、筑波山のブナの結実調査を開始した。この調査は、ブナ約200本について結実状況の調査と、そのうちのサンプル木の種子300粒を採取して健全度を調査するものだ。もちろん、特別許可を得ての実施だ。今年の筑波山のブナは、当たり年かもしれない。例年だと実が付くの木はほんの僅かだが、今年は区域が限られているものの実を付けている木が目立つ。しかし、大量に付いている木は少なく、やっと確認出来るという程度が多い。それでも、枝先に実が付いているのを見つけたときは嬉しい。ましてや、その根元に幼木の芽生えを見つけた時などはなおさらだ。筑波山では、後継のブナの若木が少なく、写真のようなような幼木はとても貴重なのだ。やっと実った何千粒の中から、幸運な一粒が発芽したのだろう。是非とも、順調に育って欲しい。これからずっと見守っていきたい。

 個体番号を確認するために、岩に登ったらバランスを崩して落ちてしまった。背中を強く打って、一瞬、息が止まったが、幸いヘルメットをかぶっていて、ザックを背負っていたので無事だった。まだまだ、この調査は続くので、気を引き締めてのぞまなくては。



2012年11月13日

筑波山へ紅葉を見に

友人たちと、筑波山の紅葉を見に裏筑波を登ってきた。もう山頂付近は散っていて、標高600m付近が色づいている。今年は、紅葉が一週間ほど遅れているようだ。もっとも筑波山のは、「紅葉」でなく「黄葉」だ。時折、雲間から陽が射し込むと、コアジサイ、シラキ、クロモジ、ウリハダカエデなどの木々がレモン・イエロー色に輝いて、一瞬、森が明るくなる。アカシデ、ブナ、ミズナラ、ホオノキなどの落葉を踏みしめながら、山頂までを往復してきた。嬉しいことに、二羽のウソにも出会った。
 いまでは、静かな筑波山を楽しむルートは、この真壁・八郷側しかない。いつまでも、この環境を大切にしたいものだ。(携帯の写真なのでピントが甘いが、お許しを)


2012年11月12日

朝日トンネルを通って

つくばに用事があって、先ほど、開通したばかりの朝日トンネルを通って八郷に戻ってきた。しかし、走っていて複雑な気持ちになった。これまで、八郷盆地に入るのに、あの曲がりくねった坂道を走って峠を超えるのが、どこか異界に踏み入る儀式のようで好きだったのだけれど、トンネルではあっという間に入り込んでしまう。確かに、トンネルは気象に影響されないし、時間とガソリンの節約にもなるが、でも、やはり味気ない。とうとう、八郷盆地にも、「効率」や「便利」や「観光」などという今ハヤリの波が押し寄せてきたのかと思うと少し寂しい気持ちになる。せめて、トンネルの出口に、道祖神(塞の神)でも祀って、都会からの悪い風が吹き込まないように、また八郷盆地に溜まった筑波山の「氣」が、あの穴から漏れ出さないようにしたいものだ。

2012年11月9日

道祖神峠にて


 昼食を求めて、道祖神峠を超えて笠間方面へ車を走らせた。峠の入口にある民家の前に、温州ミカンがたわわに実っていた。道路脇に車を止めて写真を撮った。ここは吾国山の南面だから、よく陽があたって暖かいのだろう。



2012年11月8日

キツネの嫁入り


 次は、僕がKおばあちゃんから直接聞いたキツネの嫁入りの話。
 このおばあちゃんとは、4日付けのブログの写真で銀杏を干していたおばあちゃんである。彼女がまだ娘時代の頃、夏の暑い夕方、母親と妹と一緒に門の前(ブログの写真)のところで夕涼みをしていた時のことである。家の前には田んぼが広がっていて、夕方になると門の辺は田んぼから風が吹いてきてとても涼しかった。すると、田んぼの中の道を、東から西に向かって、門前を横切るように大きなと橙い光の玉が二十も三十もつらなって、ゆっくりゆっくり移動してしきたのを見たそうである。もう、その時は恐ろしくて悲鳴をあげながら家の中に逃げ込んだと言っていた。
 二度目は、おばあちゃんが明日結婚式を挙げるという春の彼岸の前日のことである。石岡から泊まり込みできていた髪結いのおばあさんに、朝方の午前三時頃に起こされて、真っ暗な中を一人で裏の井戸へ顔を洗いに行った。すると、目の前の畑の稜線のところに山に向かって黄色の光の玉が十個か二十個、列をなして動いていくのを目撃したそうである。この時は、少しも怖くなくて、むしろ、自分の結婚式を祝福してくれるんだと嬉しく思ったとのことである。

 八郷には、このような話が昨日の出来事かのように思える風景や人々の生活が随所に残っている。おばあちゃんがキツネの嫁入りを見たと言う田んぼ道も、今でもそっくりそのままの姿で残っていて僕の散歩道となっている。永遠にこのままであって欲しい。


『こんこんギャラリー』にて

  八郷の『こんこんギャラリー』をご存知だろうか?ここは、今から約十年前に、地元のモノつくりの作家たちが、自分たちの作品を発表して展示即売するために、セルフビルドしたギャラリーである。毎週木曜日から日曜日までと祝日に開いている。毎月のように様々な企画展などを開催している。その建っている場所も、狐塚といわれている丘の上にあって、周辺には、いかにも八郷らしい美しい風景が広がっている。名前の「こんこん」は、この「狐塚」から名付けられたのだ。きっと、昔はここにもキツネが棲んでいたのだろう。また、この『こんこんギャラリー』は、小さなカフェでもある。いつもはコーヒーだけだが、今日はラッキーなことに、作家の横田さんが手作りしたキノコとエビとホウレンソウのキッシュやチョコレート・マフィンもあった。ここで窓から畑や林の木々を眺めながら、素晴らしい作品を鑑賞したり、お茶や美味しいケーキをいただくのは、八郷でも極上の時間の過ごし方だ。

 なお、いくら狐塚の『こんこんギャラリー』だからといっても、上の写真の着物姿の美しい女性は狐ではありません(念のため)。


2012年11月4日

輝く光の粒々



筑波山麓の秋祭りも無事に終わった。締め括りは、友人のKさんご夫妻と夜の筑波山にケーブルカーで登り、立身石の上に立って下界を眺めた。眼下に無数の光の粒が広がり、まるで空中に漂っているかのような不思議な浮遊感覚を味わった。今でも、その光景が眼に焼き付いている。

 輝く光の粒と言えば、一昨日、Mさん親子と近所のKさん宅を訪れたとき、おばあちゃんが門の前で、銀杏を干していた。それに透明な秋の朝日が当たって、一つ一つの粒が銀白色に輝いていた。この光景を見て、「銀杏」という名前の由来が「銀色に輝くアンズ」の意味だと納得した。
 静かな山里、旧家の門前、おばあちゃん、秋の日差し、輝く銀杏・・・・。絵の中のような光景だった。



2012年10月31日

今度はトラツグミ!

 キツネのブログを書き終わって、ぼんやり窓から庭を見ていたら、しきりに落葉を啄んだり、ひっくり返している鳥がいるのをみつけた。双眼鏡で見たら、トラツグミだ! 特徴ある胸のトラ皮模様がはっきり判る。もう、渡って来ているのだ。ピーは、夕べの夜遊びが過ぎて、僕のベットで朝寝坊しているのが幸いだ。

たった今、キツネが!

 たった今(午前6時55分)、山小屋の庭をキツネが横切った。西側のヒノキ林から出てきて、窓から8mほどのところをスタスタと歩いて東側の森に向かって行った。まだ、若いキツネなのだろう。大きな尻尾にスラリとした体型が美しい! 撮影しようとカメラを取りに行っている間に姿が消えた。どうか、また現れて欲しい。(できたら、女性に化けて)
 これで、今年はテンにキツネと人を化かす獣が二つも現れた。残すはタヌキのみ。これは僕が見ていないだけで、きっと来ているだろう。いよいよ、理想の山小屋になってきた。実に嬉しい!!!



2012年10月26日

陽だまりがほしい


 このところ、八郷の朝夕が、急に冷え込むようになった。シャラの木もヤマボウシも、色づき始めた。北斜面のカラムシの葉は、朝露に濡れていかにも寒そうだ。今朝などは肌寒くて、暖かな陽だまりが欲しくなったほどだ。そこで、庭の南側に椅子を持ち出した。ぽかぽかと朝日が当たって、実に気持ちが良い。シジュウカラやヤマガラの群れが、すぐ脇のコナラの枝で騒いでいる。リンゴを齧りながら、本を読んでいたら居眠りしたくなってきた。ピーも隣で寝ている。
この日光浴用の椅子は、来年の春までここに置くことにしよう。


2012年10月24日

祝!初めてユズが実る


 30年以上も昔に栃木県の田沼町の市でユズの苗木を買い求め、自宅の庭の隅に植えて大事に育ててきた。毎年秋になるとたくさんの実をつけて家族を喜ばした。しかし、一昨年、宅地造成で伐採しなければならなくなったのだ。非常に残念に思っていたいたところ、山小屋の裏庭に植えておいたユズの木がいつの間にか大きなって、とうとう今年初めて実を付けた。今日、何気なく葉の茂みを見上げたら、その中に濃い緑のユズの実を見つけた。一つだけではない。あちこちに丸い緑の玉がぶら下がっている。この木は植えてから6、7年経っている。「ユズの大馬鹿18年」と言われて、実生からだと実るまでに長い年月がかかるが、これは接ぎ木だから早かったのだろう。幼いうちは、八郷の厳冬期を無事に越えられるかと心配したが、もう、大丈夫だ。これからは、毎年、実ってくれるだろう。さて、初ユズをどんな料理に使おうか。柚子胡椒でも作ってみようかな。


2012年10月19日

ピーはトコだ!

 実はネコには、ネコ、ヘコ、ムコ、トコの四種類があるのをご存知だろうか? ネコはネズミを、ヘコは蛇を、ムコは虫を、トコは鳥を捕るのを専門とする。
 どうやら、うちのピーはトコのようだ。今朝の明け方、隣の部屋でドタバタする音がするので起きたら、ピーが、黒と黄色の入った小鳥を咥えている。何処かで狩りをしてきたらしい。急いで小鳥を取り上げたときは、もう息絶えていた。見ると、白いお腹に鮮やかな黄橙色の胸、そして黒い背中に白と黄色の模様、眉も黄色で、あまり見慣れないとても美しい小鳥だ。そうだ!これはキビタキの雄だ! キビタキは、春の渡りの頃、梢でさえずっているのと稀に出会う事があるが、今頃の季節に見かけるのは初めてだ。夏鳥だから、日本の何処かの森で繁殖して、これからフィリッピン辺りまで、ひっそりと帰ろうとする途中だったのだろう。それが、たまたま、僕の庭に羽根を休めたばっかりに、ピーに捕まってしまったのだ。可哀想なことをしたと思うが、これも野生のなせること。ピーを叱ってもしかたがない。

2012年10月14日

ヨメナかユウガギクか?


  萩が終わって、今頃の庭を飾るのキク科の植物だ。入口の道路に沿って白い花が一面に咲いている。キクの種類を見分けるのは難しい。ずっと、カントウヨメナだと思っていたが、道路脇にかがみ込んで見れば見るほど、そう断定する自信が揺らいでしまった。図鑑に、ユウガギクは、「葉がヨメナより薄く、しばしば羽状中裂」とある。確かに、葉っぱの切れ込みが深い。
 万葉集にある「春日野に煙立つ見ゆ少女らし春日のうはぎ採みて煮らしも」の「うはぎ」は、ヨメナの古名である。古くから、春先に、若葉をつんで食用とした。もっとも、これは、西日本に分布するヨメナを歌ったもので、東日本のは、このヨメナとユウガギクの中間型(カントウヨメナ)というから、どうりで判別が難しいはずだ。
 G先生の本によると、「ゆでて刻み、塩味と共に熱いご飯にまぜ、独特の風味を楽しむ」とあるから、来年の春まで忘れていなかったら試してみよう。食べるぶんには、どちらでも同じだろう。



2012年10月9日

美味しい食事を求めて


 今朝のブログで気分が悪くなった方がいるかもしれないので、口直しをアップする。
 このところ忙しかったので、ちゃんとした食事をしていなかった。そこで、今日こそはと思って小屋を出たのはいいが、連休明けの火曜日なので、行きつけのレストランがみな休みなのだ。困った!うろうろと車で探したが適当な店が無く、とうとう岩瀬を過ぎ、雨巻山を回り込んで栃木県の益子まで行ってしまった。益子なら気の利いた店がいくつかある。その中の『カ*エ・フ*ネ』に入ることにした。ここは少し奥まった静かな谷間にあって、陶芸家の家族三人で営んでいる。食器類はすべて陶芸家のご主人と息子さんの作品、料理は奥さんの手作りだ。お皿やカップはもちろんのこと、建物、部屋、庭も、実に洗練されていて居心地が良い。そして、料理はというと、これまたセンスが良くて、素晴らしく美味しいのだ。写真を撮りたくなる気持ちをぐっと押さえて、僕が食べたのは、イカのマリネとローストビーフ、オリーブの実が入ったサラダ、鳥もも肉のローストにバルサミコ・ソース掛け、焼きムール貝、刻み野菜の乗ったごま豆腐、それに良く味の染み込んだ冷野菜、そしてカボチャのクリームスープと二種類のパン。デザートはマスカットと梨、それにコーヒー。これらのどれをとっても、かなりのグレードである。そして、お値段は驚くほど安い。
 それにしても、お客は女性ばかり。こんな良いお店が女性だけに占領されるのは、残念でならない(半分冗談)。


変ないきもの二つ


 2日から続いた『筑波山の自然展』も、昨日で終わり、Kさんから借りていたムササビの剥製も返した。久しぶりにのんびりした気分で庭を歩いていたら、「変ないきもの」を見つけた。一つ目は、丸くて白い玉子で、つまむと嫌らしい弾力がある。一瞬、ヘビの卵かと思ったが、この季節に産卵するはずが無いと思いなおし、勇気をだして半分に切ってみた。どうやらタマゴタケの仲間のようである。昔から、キノコや粘菌は、どことなく動物的なところがあると感じていたが、ますます、この思いを強くした。彼らは動物に成りきれない植物だ。まだ、他に2個あるので、これから何が出てくるのか見届けてやるつもりだ。

 二つ目は、裏庭の夏みかんの若葉を食い荒らしている正体が判った。模様からすると、クロアゲハの幼虫らしい。グリーンのビロードで作った縫いぐるみみたいで可愛い。垂れ目の模様も愛嬌がある。指で触ったら、匂いのする二股の紅い角(肉角)を、ニョローと出した。これで、僕を脅したつもりのようだが、結構、良い香りだし、色も美しいので、かえって喜ばせてくれる。幼いミカンの木を丸坊主にされるのも困るが、この子が羽化するまで見届けたいので迷ったが、結局、そのままにしておくことにした。



2012年10月7日

刺激的な一日


今日は、ひどく刺激的な一日だった。まず朝7時半から9時まで、筑波山麓の山寺で座禅をして過ごし、午後は武蔵美の学生たちと八郷盆地を巡った。八郷は、もの作りの人たちが多く住む所だ。陶芸、絵画、書、工芸、木工、染色などなど、様々な分野で活躍している。今日の学生たちは建築科である。そこで、是非とも I 先生のお宅を訪問しようと思った。なにしろ、そのお宅は、I 先生が自ら設計し、ご夫婦だけで建設しているのだ。全体計画は20年であるが、8年目にあたる現在は、母屋だけが完成している。今年度の環境建築部門の最優秀賞を受賞しただけあって、その完成度は「すごい!」の一言だ。さらに驚嘆するのは、屋根葺きと漆喰壁を除いて、基礎も構造もOMも、内装も家具も、すべてをご夫婦二人だけで作ったのだ。もう、セルフビルドなどと軽々しい言葉は使えない。建物の内部も案内して頂いた。ここでも、また、驚きが私たちを待ち受けていた。それが何なのかは、長くなるので次の機会に。

 八郷の山々が望めるデッキの上で、I 先生が図面や写真を広げ、学生たちは目を輝かせて、先生のレクチャーに聞き入っている。そんな姿を見ると、まるで大学の講義のようで、思わず微笑んでしまった。一人の学生にどうだったと聞いたら、「もう、大学の講義以上の素晴らしさで感激です」と答えていた。当たり前である。ここは、先生が、自分の思想に基づいて、自ら制作した「作品」の現場なのだから。


2012年10月2日

彼岸花

今年は咲くのが遅いと思っていたヒガンバナが、いま花盛りである。『筑波山の自然展』の帰り、筑波山神社の駐車場の脇にたくさん咲いているのを見つけた。この花は、よく陽の当たる畦や土手にも似合うが、お寺のスダジイの少し薄暗い木陰などで、どことなく妖しい雰囲気を周囲に漂わせているのも決して悪くない。この植物は、方言が関東以西を中心に千個以上もあることからわかるように、昔から人との結びつきが強く、分布の拡大は人の手によるものと言われている。毒性を利用して、田んぼの畦やお墓を野生動物が荒らすのを防いだり、飢饉の際には鱗茎を水にさらして澱粉を取り食用としたりと何かと人の役に立った植物なのだ。
 そんな、すこし重苦しい過去の影を忘れて、純粋に花そのものを凝視すると、その鮮やかな緋色と造形美にハッとする。ぜひ写真を拡大してご覧あれ。



2012年9月30日

カッコいい歳のとり方

 自分では、あまりその意識は無いのだが、一応は物理的に還暦を過ぎていて、いずれその時が来るのだから、「カッコいい歳のとり方とは?」と考える事がごく稀にある。先日、BSの旅番組で、イタリアの田舎によくある旧い石畳と石造りの建物に囲まれた街角が映っていた。石壁に背を持たせて、数人の老人が、何やら楽しそうに話しながら通りを見ている。皆、ヒゲを蓄えオシャレで威厳がある。アナウンサーが、その中の一人に、何をしているのかと聞いたら、「今、皆で精神修行をやっているのだ」と答えが返ってきた。続けて、どんな修行かと聞いたら、皆で道を行き交う女性の美しさを評価しているのだと。あれは、中の上だとか、上の下とかと。さすが、イタリアである。彼らの姿が、実に様になっていた。
 もう一つは、どこだか忘れたが、その町では、多数の老人男性が集会所みたいな所に集まって、自分たちだけで凝った料理を作り、食材やお酒に蘊蓄を傾けながら会食していた。皆、実に楽しそうに料理している。何と! 週に3回もこうした会を催すそうだ。アナウンサーが、なぜ奥さんと一緒ではないのかと聞いたら、彼らも笑いながら、ずっと一緒だったから、たまには解放を許してもらっていると答えていた。この明るさ、軽さ、屈託の無さは、実にカッコいい。ヨーロッパの老人は、カッコいい歳のとり方を知っている。

2012年9月26日

栗の収穫


お彼岸は雨が続いた。久しぶりの天気。庭に出たら、栗の実が口を開いて収穫頃になっている。今年は、これまでに無く豊作だ。大粒の実が、陽に輝いている。さっそく、ピーと栗拾いをすることにした。棒で枝を叩くと、ポトポトと簡単にイガごと落ちる。気をつけなければ!僕もだいぶ髪の毛が薄くなっているから、頭に落ちたら大変だ。落ちたイガを、足でこじ開けると、丸々と太った栗の実が飛び出してくる。今日の収穫は、中くらいのボールに一杯あった。まだまだ、木にはたくさん残っている。この栗の木は、約9年前に山小屋を建てたときに友人のF君が植えたものだから、残りは彼の分としよう。



2012年9月22日

『ガラジ ピクニック バザール』へ


 以前から行こうとしても、何かと都合がつかず実現しなかった『GARAGE PICNIC BAZAAR VOL.7』へ、とうとう行ってきた。場所は、笠間市南部の上加賀田。難台山の北側山麓で、周囲は栗林と谷津田と雑木林が広がり、屋敷林を背にした民家が見え隠れする。雨上がりの山並みが高台の会場を囲んでいる。清々しくて美しい場所だ。この会場は、9年前に、仲間たちで元豚小屋を改造してギャラリーにしたという。だから、作家ごとに仕切られている空間をブースと呼んでいる(笑)。オープンするのは年一回、今日(22日)と明日(23日)の2日間だけ。陶器、ガラス、木工雑貨、造形左官などの作品を展示販売している。カフェや楽器の演奏もある。若い人や新しい感覚の作家が中心になっているせいか、全体が明るく新鮮な空気に満ちている。訪れる人も、若いカップルや女性が多いので、会場は華やかで楽しげな雰囲気に溢れている。あちこちで、来客者と作家とが親しく会話しているのが聞こえる。このように、のんびりとした里山の風景の中で、作品の作り手と訪れた人が、じっくり会話を楽しめるギャラリーって、そうあるものではない。まさに名前の通り、ここは「ピクニック バザール」である。僕も雰囲気に酔って、可愛いブルーの椀を一つ買った。


2012年9月20日

ツルボが花盛り

山小屋の下の道路脇にツルボが花盛りだった。他の雑草にツンと抜きん出て、淡紫色の小花をたくさん付けている姿が目立つ。名前もそうだが、姿も他の草と異なった独特の雰囲気を持っている。ツルボはユリ科の植物で、春に出た葉は夏に枯れて、再び初秋に葉と茎を出して花を咲かせる。冬になると地上部が枯れて姿を消す。地下には、黒いラッキョウ形の球根があるという。名前の由来を調べたが、意味不明となっていた。こんなに目立つ草花のなのに、何かといわくありそうな植物だ。


そういえば、まだヒガンバナ(ヒガンバナ科)の花を見かけない。いつもなら、お彼岸近くに決まって咲くのだが、今年はまだ咲いていない。夏の暑さがいつまでも厳しくて雨が降らなかったからだろうか?


2012年9月18日

土祭に行く

そういえば、益子で「土祭」が、始まっているはず。雨の上がるのを待って出かけた。時々、雲間から強い陽が射す。平日のせいか、人出は少ない。のんびりと町を歩ける。ところどころの旧い商店の店先などに「土祭」の白い旗が掲げてある。どうやら、そこが見学やイベントが開催される場所のようだ。その一つに入ったら、「パスポートは?」と問われてしまった。パスポートを購入した人だけが見学できる仕組みになっているらしい。しかたがない。内町の屋台で、お米コーヒーを飲みながら「お焼き」をかじり、「ヒジノワ」(写真)で、遅いランチを食べて帰った。当初、参加するのにお金がかかるのが気になったが、質の高い「祭り」を実行する費用を自分たちで捻出するというのならば、これも一つの方法かと納得した。
 この「土祭(ひじさい)」は、昔からこの地に伝わる祭りではない。もの作りの人や都会からの移住者を中心に、4年前から地元を巻き込んで始まった新しい祭りである。
 土祭とは、『益子の風土、先人の知恵に感謝し、この町で暮らす幸せと意味をわかちあい、未来につなぐ』、そして『土、水、里山、植物。私たちを取り巻く自然環境との共存を学びます。益子だから出来る、これからの時代の「田舎での幸せな暮らし」について考えます』とのこと。

 さすが、「スターネット」の馬場さんが総合プロデュースするだけあって、何かカッコいいな〜。


2012年9月16日

庭にテンが現れる!

 

 何と! たった今、山小屋の庭にテンが現れた。デッキでコーヒーを飲みながら本を読んでいたら、10mぐらい離れたところをテンが、ヒョコヒョコと飛び上がるように歩きながら横切るではないか。隣で寝ていたピーも気が付いて追いかけた。テンは、庭のコナラの木に登り逃げようとする。急いでカメラを持ち出し、撮影したのが上の写真である。本当に驚いた!昨日は筑波山麓で目撃して喜んでいたが、今日は自分の山小屋で見かけるとは。テンは、昔から妖怪だとも言われている。長くなるが、せっかくだからWikipediaから、テンにまつわる伝承を転載する。こう続けてテンと遭遇するとは、僕はよほど妖怪に好かれているのか、あるいは何かとんでもなく悪い事が起きる先触れかもしれない(あまり気にしていないが)。


「三重県伊賀地方では「狐七化け、狸八化け、貂九化け」といい、テンはキツネやタヌキを上回る変化能力を持つという伝承がある。秋田県や石川県では目の前をテンが横切ると縁起が悪いといい(イタチにも同様の伝承がある)、広島県ではテンを殺すと火難に遭うという。秋田県北秋田郡地方では、モウスケ(猛助)とよばれ、妖怪としての狐よりも恐れられている。福島県ではテンはヘコ、フチカリ、コモノ、ハヤなどと呼ばれ、雪崩による死亡者が化けたものといわれた。
鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』には「鼬」と題した絵が描かれているが、読みは「いたち」ではなく「てん」であり、イタチが数百歳を経て魔力を持つ妖怪となったものがテンとされている。画図では数匹のテンが梯子上に絡み合って火柱を成しており、このような姿に絡み合ったテンが家のそばに現れると、その家は火災を遭うとして恐れられていた。」



2012年9月15日

今日の「筑波山麓自然学校」にて

 今日は、つくば市の『筑波山麓自然学校』で、「身近な薬草を探そう」をテーマに大倉多美子先生による森の観察と講演があった。山道を歩けば、どこにでもすぐ見つかるような植物に、多くの重要な薬効があることを知り、まさに「目から鱗が落ちるような」思いだった。また、漢方医学研究の第一人者として、長い間、研究生活を続けられてきた先生のものの見方・人生の考え方の一端を聞かせていただき、自分の日頃の生活を振り返って見る契機にもなった。たいへん楽しく有意義な講座であった。

 更に、今回の自然学校では、もう一つ貴重な体験をした。先生を案内して、森の小道に入ったとたん、目の前でテンを目撃したのだ。ほんの一瞬、夏毛の黒褐色の背中と胸首の鮮やかな黄色がチラリと見えた。筑波山にテンが生息しているのは知っていた。しかし、こんな昼間から出会えるとは考えてもいなかった。しかも大勢の目の前で。何年間も筑波山中を歩き回っているが、こんなことは初めてだ。テンは、神秘的な動物で、地方によっては、道の前を横切ると不吉なことが起こるといわれている。でも、僕にとって、彼と会えたのは「超ラッキー」な出来事だったが。
 テンとは、どんな形の動物かを知ってもらうために、一年前に笠間で撮影した写真を再掲載する。結構、生々しいので、拡大して見る際は、覚悟して欲しい。

2012年9月13日

朝を楽しむ

まだまだ日中は暑いが、八郷の朝晩はめっきり涼しくなった。ピーも、明け方に僕のベッドに潜り込んでくるようになった。今朝の空気は気持ちがいい。木漏れ日のデッキで朝飯をとり、コーヒーを飲んだ。デザートはトマト1個だけ。用事で小屋を出る時刻まで、まだまだ2時間もある。ピーと遊んだり、昨日の日記を打ち込んだり、雑誌を拾い読みするには十分だ。



2012年9月12日

キチョウの出迎え


このごろ、山小屋で僕を出迎えてくれるのは、ピーとキチョウたちである。いつも入口までの植え込み付近で数頭が舞っている。どこかに彼らの好む植物があるに違いない。ハギだ! ハギはキチョウの食草である。ハギの紅い花と黄緑色の葉の間を、鮮やかな黄色の蝶が何匹もひらひら飛んでいる。彼らが集まっている枝先をよく見ると、小さなサナギが括り付いている。それが、黄色みを帯びた緑色で、ハギの新葉とそっくりな色と形をしている。一つ見つけると、あちこちの枝先にもたくさん付いているのが判った。いま、飛んでいるのは、羽の縁の黒い部分が太い夏型だが、これらのサナギから出てくるのは秋型だろうか。当分の間、キチョウたちの出迎えが期待できそうだ。


2012年9月11日

つくばで道草

 あちこちで道草を食いながら、流山の自宅から山小屋へ戻った。いくつになっても、道草は楽しいもの。まず、つくばの『月と太陽の珈琲 カミーナ・ノスタルジカ』で、黄金色の田んぼを眺めながら、深煎りのマンデリンを飲んだ。ここのコーヒーは特別だ。褐色の液体が、体中にゆっくりと沁み込んでいくよう。飲むにつれ、カフェインが徐々に身体と意識を目覚めさせるのがはっきり判る。あまりに美味しいので、帰り際にマスターに、「何か秘密のものが入っているのでしょう」と言ったら、彼はただ笑っていた。

 次は、今日から「つくば美術館」で開催されている「やさと椅子展inつくば」をのぞいた。先日、出展者の一人であるOさんから案内状をいただいていたのだ。ほぼ正方形の空間に、20人の作家が100脚の椅子を展示している。これだけ、一つ一つみな形も座り心地も雰囲気も違う作品が、ずらりと揃うと壮観である。「この椅子は、どんな部屋で、座りながら、どんな事を考えたりするのが相応しいかな」などと想像しながら、端から気に入った椅子に座っているうちに、だんだん楽しくなってきて、時間が経つのを忘れてしまった。慌てて、ピーの待つ小屋に向かったが、着いたのは午後も4時過ぎだった。この展示は、17日(月)まで開催されている。是非、ご覧下さい。