2012年8月24日

『オオカミの護符』を読む

 一昨日、小倉美恵子著の『オオカミの護符』(新潮社 2011)を柏の書店で見つけて、一晩で読み終えた。こんなに夢中になって読んだのは、しばらくぶりだ。著者は、自宅である川崎の農家の土蔵に貼られた一枚のオオカミの護符と出会い、あたかもオオカミに導かれるかのように、縄文にさかのぼるオオカミ信仰の源流を訪ねる。そして、ついに「戦後、私たちは東京に目を奪われて慌ただしく過ごしてきたが、祖父や祖母、そして武蔵國のお百姓は皆、山に気持ちを向けて生きてきた」ことを発見して、百姓とオオカミ、すなわち人と自然風土の関わりを見つめることで、「「山の世界」、すなわち自分たちを生かしめてくれる「命の根源」そのものへの思い」が、やがて山岳宗教へと結晶して行ったと思いいたった。
 この本を読んで、以前から山小屋の壁に掛かっていたオオカミの絵馬を取り出してみた。これは20年ほど前に、家族で栃木県のどこかの神社に初詣にいった際に求めたものである。この図柄に、こんな歴史と生活、そしてこれからの未来に必要なものがあったなんて! 改めて、しみじみと眺めた。


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