2012年9月30日

カッコいい歳のとり方

 自分では、あまりその意識は無いのだが、一応は物理的に還暦を過ぎていて、いずれその時が来るのだから、「カッコいい歳のとり方とは?」と考える事がごく稀にある。先日、BSの旅番組で、イタリアの田舎によくある旧い石畳と石造りの建物に囲まれた街角が映っていた。石壁に背を持たせて、数人の老人が、何やら楽しそうに話しながら通りを見ている。皆、ヒゲを蓄えオシャレで威厳がある。アナウンサーが、その中の一人に、何をしているのかと聞いたら、「今、皆で精神修行をやっているのだ」と答えが返ってきた。続けて、どんな修行かと聞いたら、皆で道を行き交う女性の美しさを評価しているのだと。あれは、中の上だとか、上の下とかと。さすが、イタリアである。彼らの姿が、実に様になっていた。
 もう一つは、どこだか忘れたが、その町では、多数の老人男性が集会所みたいな所に集まって、自分たちだけで凝った料理を作り、食材やお酒に蘊蓄を傾けながら会食していた。皆、実に楽しそうに料理している。何と! 週に3回もこうした会を催すそうだ。アナウンサーが、なぜ奥さんと一緒ではないのかと聞いたら、彼らも笑いながら、ずっと一緒だったから、たまには解放を許してもらっていると答えていた。この明るさ、軽さ、屈託の無さは、実にカッコいい。ヨーロッパの老人は、カッコいい歳のとり方を知っている。

2012年9月26日

栗の収穫


お彼岸は雨が続いた。久しぶりの天気。庭に出たら、栗の実が口を開いて収穫頃になっている。今年は、これまでに無く豊作だ。大粒の実が、陽に輝いている。さっそく、ピーと栗拾いをすることにした。棒で枝を叩くと、ポトポトと簡単にイガごと落ちる。気をつけなければ!僕もだいぶ髪の毛が薄くなっているから、頭に落ちたら大変だ。落ちたイガを、足でこじ開けると、丸々と太った栗の実が飛び出してくる。今日の収穫は、中くらいのボールに一杯あった。まだまだ、木にはたくさん残っている。この栗の木は、約9年前に山小屋を建てたときに友人のF君が植えたものだから、残りは彼の分としよう。



2012年9月22日

『ガラジ ピクニック バザール』へ


 以前から行こうとしても、何かと都合がつかず実現しなかった『GARAGE PICNIC BAZAAR VOL.7』へ、とうとう行ってきた。場所は、笠間市南部の上加賀田。難台山の北側山麓で、周囲は栗林と谷津田と雑木林が広がり、屋敷林を背にした民家が見え隠れする。雨上がりの山並みが高台の会場を囲んでいる。清々しくて美しい場所だ。この会場は、9年前に、仲間たちで元豚小屋を改造してギャラリーにしたという。だから、作家ごとに仕切られている空間をブースと呼んでいる(笑)。オープンするのは年一回、今日(22日)と明日(23日)の2日間だけ。陶器、ガラス、木工雑貨、造形左官などの作品を展示販売している。カフェや楽器の演奏もある。若い人や新しい感覚の作家が中心になっているせいか、全体が明るく新鮮な空気に満ちている。訪れる人も、若いカップルや女性が多いので、会場は華やかで楽しげな雰囲気に溢れている。あちこちで、来客者と作家とが親しく会話しているのが聞こえる。このように、のんびりとした里山の風景の中で、作品の作り手と訪れた人が、じっくり会話を楽しめるギャラリーって、そうあるものではない。まさに名前の通り、ここは「ピクニック バザール」である。僕も雰囲気に酔って、可愛いブルーの椀を一つ買った。


2012年9月20日

ツルボが花盛り

山小屋の下の道路脇にツルボが花盛りだった。他の雑草にツンと抜きん出て、淡紫色の小花をたくさん付けている姿が目立つ。名前もそうだが、姿も他の草と異なった独特の雰囲気を持っている。ツルボはユリ科の植物で、春に出た葉は夏に枯れて、再び初秋に葉と茎を出して花を咲かせる。冬になると地上部が枯れて姿を消す。地下には、黒いラッキョウ形の球根があるという。名前の由来を調べたが、意味不明となっていた。こんなに目立つ草花のなのに、何かといわくありそうな植物だ。


そういえば、まだヒガンバナ(ヒガンバナ科)の花を見かけない。いつもなら、お彼岸近くに決まって咲くのだが、今年はまだ咲いていない。夏の暑さがいつまでも厳しくて雨が降らなかったからだろうか?


2012年9月18日

土祭に行く

そういえば、益子で「土祭」が、始まっているはず。雨の上がるのを待って出かけた。時々、雲間から強い陽が射す。平日のせいか、人出は少ない。のんびりと町を歩ける。ところどころの旧い商店の店先などに「土祭」の白い旗が掲げてある。どうやら、そこが見学やイベントが開催される場所のようだ。その一つに入ったら、「パスポートは?」と問われてしまった。パスポートを購入した人だけが見学できる仕組みになっているらしい。しかたがない。内町の屋台で、お米コーヒーを飲みながら「お焼き」をかじり、「ヒジノワ」(写真)で、遅いランチを食べて帰った。当初、参加するのにお金がかかるのが気になったが、質の高い「祭り」を実行する費用を自分たちで捻出するというのならば、これも一つの方法かと納得した。
 この「土祭(ひじさい)」は、昔からこの地に伝わる祭りではない。もの作りの人や都会からの移住者を中心に、4年前から地元を巻き込んで始まった新しい祭りである。
 土祭とは、『益子の風土、先人の知恵に感謝し、この町で暮らす幸せと意味をわかちあい、未来につなぐ』、そして『土、水、里山、植物。私たちを取り巻く自然環境との共存を学びます。益子だから出来る、これからの時代の「田舎での幸せな暮らし」について考えます』とのこと。

 さすが、「スターネット」の馬場さんが総合プロデュースするだけあって、何かカッコいいな〜。


2012年9月16日

庭にテンが現れる!

 

 何と! たった今、山小屋の庭にテンが現れた。デッキでコーヒーを飲みながら本を読んでいたら、10mぐらい離れたところをテンが、ヒョコヒョコと飛び上がるように歩きながら横切るではないか。隣で寝ていたピーも気が付いて追いかけた。テンは、庭のコナラの木に登り逃げようとする。急いでカメラを持ち出し、撮影したのが上の写真である。本当に驚いた!昨日は筑波山麓で目撃して喜んでいたが、今日は自分の山小屋で見かけるとは。テンは、昔から妖怪だとも言われている。長くなるが、せっかくだからWikipediaから、テンにまつわる伝承を転載する。こう続けてテンと遭遇するとは、僕はよほど妖怪に好かれているのか、あるいは何かとんでもなく悪い事が起きる先触れかもしれない(あまり気にしていないが)。


「三重県伊賀地方では「狐七化け、狸八化け、貂九化け」といい、テンはキツネやタヌキを上回る変化能力を持つという伝承がある。秋田県や石川県では目の前をテンが横切ると縁起が悪いといい(イタチにも同様の伝承がある)、広島県ではテンを殺すと火難に遭うという。秋田県北秋田郡地方では、モウスケ(猛助)とよばれ、妖怪としての狐よりも恐れられている。福島県ではテンはヘコ、フチカリ、コモノ、ハヤなどと呼ばれ、雪崩による死亡者が化けたものといわれた。
鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』には「鼬」と題した絵が描かれているが、読みは「いたち」ではなく「てん」であり、イタチが数百歳を経て魔力を持つ妖怪となったものがテンとされている。画図では数匹のテンが梯子上に絡み合って火柱を成しており、このような姿に絡み合ったテンが家のそばに現れると、その家は火災を遭うとして恐れられていた。」



2012年9月15日

今日の「筑波山麓自然学校」にて

 今日は、つくば市の『筑波山麓自然学校』で、「身近な薬草を探そう」をテーマに大倉多美子先生による森の観察と講演があった。山道を歩けば、どこにでもすぐ見つかるような植物に、多くの重要な薬効があることを知り、まさに「目から鱗が落ちるような」思いだった。また、漢方医学研究の第一人者として、長い間、研究生活を続けられてきた先生のものの見方・人生の考え方の一端を聞かせていただき、自分の日頃の生活を振り返って見る契機にもなった。たいへん楽しく有意義な講座であった。

 更に、今回の自然学校では、もう一つ貴重な体験をした。先生を案内して、森の小道に入ったとたん、目の前でテンを目撃したのだ。ほんの一瞬、夏毛の黒褐色の背中と胸首の鮮やかな黄色がチラリと見えた。筑波山にテンが生息しているのは知っていた。しかし、こんな昼間から出会えるとは考えてもいなかった。しかも大勢の目の前で。何年間も筑波山中を歩き回っているが、こんなことは初めてだ。テンは、神秘的な動物で、地方によっては、道の前を横切ると不吉なことが起こるといわれている。でも、僕にとって、彼と会えたのは「超ラッキー」な出来事だったが。
 テンとは、どんな形の動物かを知ってもらうために、一年前に笠間で撮影した写真を再掲載する。結構、生々しいので、拡大して見る際は、覚悟して欲しい。

2012年9月13日

朝を楽しむ

まだまだ日中は暑いが、八郷の朝晩はめっきり涼しくなった。ピーも、明け方に僕のベッドに潜り込んでくるようになった。今朝の空気は気持ちがいい。木漏れ日のデッキで朝飯をとり、コーヒーを飲んだ。デザートはトマト1個だけ。用事で小屋を出る時刻まで、まだまだ2時間もある。ピーと遊んだり、昨日の日記を打ち込んだり、雑誌を拾い読みするには十分だ。



2012年9月12日

キチョウの出迎え


このごろ、山小屋で僕を出迎えてくれるのは、ピーとキチョウたちである。いつも入口までの植え込み付近で数頭が舞っている。どこかに彼らの好む植物があるに違いない。ハギだ! ハギはキチョウの食草である。ハギの紅い花と黄緑色の葉の間を、鮮やかな黄色の蝶が何匹もひらひら飛んでいる。彼らが集まっている枝先をよく見ると、小さなサナギが括り付いている。それが、黄色みを帯びた緑色で、ハギの新葉とそっくりな色と形をしている。一つ見つけると、あちこちの枝先にもたくさん付いているのが判った。いま、飛んでいるのは、羽の縁の黒い部分が太い夏型だが、これらのサナギから出てくるのは秋型だろうか。当分の間、キチョウたちの出迎えが期待できそうだ。


2012年9月11日

つくばで道草

 あちこちで道草を食いながら、流山の自宅から山小屋へ戻った。いくつになっても、道草は楽しいもの。まず、つくばの『月と太陽の珈琲 カミーナ・ノスタルジカ』で、黄金色の田んぼを眺めながら、深煎りのマンデリンを飲んだ。ここのコーヒーは特別だ。褐色の液体が、体中にゆっくりと沁み込んでいくよう。飲むにつれ、カフェインが徐々に身体と意識を目覚めさせるのがはっきり判る。あまりに美味しいので、帰り際にマスターに、「何か秘密のものが入っているのでしょう」と言ったら、彼はただ笑っていた。

 次は、今日から「つくば美術館」で開催されている「やさと椅子展inつくば」をのぞいた。先日、出展者の一人であるOさんから案内状をいただいていたのだ。ほぼ正方形の空間に、20人の作家が100脚の椅子を展示している。これだけ、一つ一つみな形も座り心地も雰囲気も違う作品が、ずらりと揃うと壮観である。「この椅子は、どんな部屋で、座りながら、どんな事を考えたりするのが相応しいかな」などと想像しながら、端から気に入った椅子に座っているうちに、だんだん楽しくなってきて、時間が経つのを忘れてしまった。慌てて、ピーの待つ小屋に向かったが、着いたのは午後も4時過ぎだった。この展示は、17日(月)まで開催されている。是非、ご覧下さい。




2012年9月9日

夜の散歩は失敗続き

 今夜も失敗だった。最近、車にばかり乗っていて運動不足になるからと散歩することにした。まだ、日中は暑いから、夜になってから集落を一周することにしたのだ。ところが、いざ、小屋から出発しようとすると、ピーがどこからか見ていて、必ず跡をつけてくる。先日の事もあるから、遠くに行って迷子にでもなったら困るから中止にせざるを得ない。今夜もそうだった。そっと抜け出し、途中で振り向いてもあいつの姿が無い。今夜こそ、大丈夫だと思って、100mほど歩いたら、やっぱり見つかってしまった。「どこに行くの? 何しにいくの?」といわんばかりに走り寄ってくる。仕方ない。今夜も中止だ。


2012年9月7日

オガタマノキの巨木

またも、霞ヶ浦に沿って南下し佐原まで行った。水運で繁栄した江戸時代の面影が残っているかもしれないと思ったのだ。しかし、佐原はすっかり観光地化していて、少しも面白くなかった。どこにでもある「町おこし」が鼻についく。代わりに、出島の柏崎にある素鵞神社の境内で、オガタマノキの巨木を見つけたのが嬉しかった。こんな大きなのは初めてだ。オガタマノキは、天照大神が天岩戸に隠れてたとき、その前で天鈿女命が、裸で踊ったときに手にしていたといわれる木である。神聖な木としてよく神社などにも植えられている。もともと、オガタマノキ(招霊木、モクレン科)は関東中南部から西日本にかけての暖かな海岸地方に多く分布している木だから、この地でこんなに立派な大木に育っているということは、ここが温暖な土地である証拠だろう。岬の先端の高台に生えているこの木は、ずっと昔から霞ヶ浦に行き交う船の安全を見守りながら育ってきたのにちがいない。



2012年9月6日

いよいよ稔りの秋

八郷では、稲刈りが始まった。田んぼに大型のコンバインが入り、朝から、あちこちで唸り声が聞こえる。スーパーに行く途中の田んぼも、すっかり色づいて、稲穂を重そうに下げている。今年は、暑い日が続いたので、稔りが例年より早いとのことだ。

 夕方、一昨日に続いて雷が来た。筑波山の方向から、黒い雨雲が押し寄せてくる様子を眺めていたら、強風の中を、何か小動物が僕に向かって一心に走ってくる。はじめはピーかなと思ったが、身体がスマートすぎる。短足で胴が長い。彼は、数メートル前のところで、僕に気付いて慌てて脇の薮に逃げ込んだ。イタチにしては大きすぎる。テンがいるとは考え難い。それとも「雷獣」か? もっとしっかり見れば良かったと思ったが、後の祭り。やっぱり、大きなイタチだったのだろう。



2012年9月4日

真壁へ散歩



峠向こうの真壁を散歩した。ひな祭りのあの喧噪が、どこか他の町のよう。街の通りは、どこもひっそりとして、古い板塀の脇に紅いサルスベリがまだ咲き残っている。お昼にと思って、おばあさんの店からコロッケを買った。が、その先の駄菓子屋に焼きそばとかき氷の旗が立っているのを見つけてしまった。いずれのお店も、いい雰囲気を出している。待っている間に、おばあさんが、ほとんどジャガイモだけの素朴なコロッケを揚げてくれた。焼きそばは、よくダシが絡まった麺にソーセージの刻んだのと胡麻がのっている。町並みとお店の構えと作ってくれるおばあさんやおじさん、そして、出されるた料理・・・、見事に調和している。コロッケは、公園のベンチに座ってつまみ食いした。何もかもが懐かしい!

2012年9月3日

筑波山での調査が完了した

これからもあるかもしれないが、今日をもって、筑波山でのブナの毎木調査と植生調査が一段落した。長かったような、短かったような。これまで、僕が関わったのは、ブナの毎木調査の3年間と植生調査の2年間の計5年間である。この間、冬を除いて、筑波山中を歩き回っていた(もちろん毎日じゃ無いよ)。いろいろな事にも出会ったが、ともかく、全員がたいした事故も無く、全調査を無事にやり通すことが出来た。僕についていえば、この間、病気も怪我も無く、計画した日程のすべてに参加できた。途中から、筑波山は私たちの調査を喜んでくれて、見守ってくれているのかもしれないとさえ思うようになった。

一緒にやった仲間たちに心からご苦労様でしたと言いたい。そして、調査を許してくれた筑波山に感謝したい。