2013年7月5日

真壁の風鈴

 「真壁の町を散歩していたら、どこからか風鈴が聞こえる。今日の蒸し暑さを忘れさせてくれるような音だ。誘われるように、音をたどっていくと、黒い板壁の雰囲気のあるカフェに突き当たって、その軒下に風鈴が下がっていた。音の源はここだったのか。ときどき通りを吹き抜ける風が短冊を揺らす。風鈴の下にある看板には、黒地に白文字で「橋本珈琲」の店名と今月23日から始まる「真壁の祇園祭」の予告が書かれていた。僕は、風鈴の音に誘われるようにしてドアを開けた。」

・・・なんていうのは半分フィクションで、本当は、いつものようにランチと珈琲を飲みに行った店の女将から地元の小田部鋳造(株)製の風鈴を紹介されたのだ。嬉しいことに、僕にその1つを譲ってくれるという。小田部家は、創業800年という真壁屈指の旧家で、ずっとその間、代々が梵鐘を鋳造し続けて来た。そのせいか、風鈴は、ずっしりと重くて、風鈴と言うよりごく小さな梵鐘という感じで、音色も鐘の響きのような深い余韻が感じられる。
 風鈴は、もともとはお寺の風鐸が元で、この季節、風に乗ってやってくる疫病や災いを清め鎮めるものだったそうだ。この意味では、祇園祭と同じである。風鈴の音が聞こえる範囲には、悪霊は近づけないと言われる。
 初夏のこの季節、懐かしい町並み、土蔵、老舗旅館のカフェ、祇園祭、そして風鈴の音・・・ 真壁の町に風鈴が良く似合っていた。




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