僕は河童の夫婦と一緒に暮らしている。今から、十年以上も前、八郷に通い始めた頃、この二人に出会った。それ以来、彼らは、ずっと自宅の机の上を住処としている。何でも、高齢のおばあちゃんが、鼻歌を歌いながら、ひょいひょいと粘土をこねて作ったものだそうだ。当時は、僕も退職するのにあたって、人並みにその後の生活に何かと不安や心配もあったが、その度に彼ら夫婦に語りかけて相談をした。すると、その愛嬌のある顔つきと暢気な表情で、「何も心配すること無いよ。本当に困ったら私らが何とかするから」と言ってくれているようで、幾度となく励まされた。実際、彼らが僕のところに来てからというもの、すべての不安や心配は杞憂に終わり、いろいろな事が良い方向へと回り始めた。
今でも、何か良いことがあるたびに、夫の河童のハスの葉の上には木の実やお賽銭を、奥さん河童の壺の中には水を満たしてあげることにしている。また、そのとき頭の皿に水を掛けてやるのも忘れない。
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