2017年3月28日

古典的な椿が咲く





 将来、海のものとも山のものとも分からない子を大切に育て、やがて生長して、ある日、突然、美しく開花したり才能を発揮する姿を眼にすることほど嬉しいことはない。

 今年の冬、花木センターの片隅に、半ば捨てられていた椿の苗を格安で買ってきて庭に植えた。当然、花の写真や品種を示したラベルはどこかに落ちてしまって、この木にどんな花が咲くのか全くわからない。それでも、散歩のたびに無事に根着いたかが気になって必ず見て回った。やがて、小さな蕾が出てきたので、今度は、花は赤か白か、一重か八重かと楽しく迷った。

 この椿の苗もそうだった。初め小さな蕾が緑色だったので、てっきり白い花だと思っていた。ところが、蕾が膨らんできたら、赤い花弁がのぞいている。今度は赤色だと思った。しかし、開花したら、驚いたことに、やや珍しい「卜伴(ぼくはん)」または「月光(がっこう)」と呼ばれる古典的な品種だった。江戸時代(1719年)の『広益地錦抄』にも掲載されているらしい。赤でも白でもない、意外な展開だった。

 まあ、こんなこともあるから、未知のものを育てる楽しみは止められない。捨て苗木を買うことも(笑)。


 

2017年3月13日

春の妖精が舞い降りた


 
 我が家に、「春の妖精」が舞い降りた。庭の椿の下で、ひっそりとニリンソウが一株だけ花を咲かせているのを見つけた。この花が咲くと、「いよいよ春が来たな〜」と思う。
 ニリンソウは、「スプリング・エフェメラル」と言われる植物グループの中の一つである。この仲間は、早春の今頃からいち早く花を咲かせ、青葉の繁る5月末ごろにはもう地上から消え去る。あとはずうっと、翌年の春まで、地下にある根茎や球根の形で休眠している。だから、「春のはかない命」とか「春の妖精」と訳されている。
 この仲間には、草丈の割には大きな花や鮮やかな色の花をつけるものが多い。きっと、まだ飛び回っている昆虫が少ないので、少しでも目立とうとしているのだろう。魅きつけられるのは、昆虫ばかりではない。人間の僕も同じこと。妖精の可憐さに魅かれて、心がウキウキしてくる。