2018年1月7日

海の恵み


 明日から寒波がやって来て冷え込むらしい。だからというわけでは無いが、今日は、西へ東へと薪集めに奔走した。おかげで、皆さんから戴いた量で、無事今年の冬を越すことができそうだ。

 友人のY氏の所に薪を取りに行った際に、彼の自宅に寄ったら庭先で塩を作っていた。話には聞いていたが、実際に海水を煮詰めて塩を作るのを見るのは初めてである。彼は、毎年自宅で使う塩は自給している。今年はこれで3回目だそうだ。昔は、九十九里沿岸のいたる所で作っていて、ところどころに釜の字が付く地名があるのはその名残だそうだ。この直煮製塩法は最も古い製塩方法で、縄文・弥生時代の頃から行われていた。各地の遺跡で製塩土器が見つかっている。いかにも、古代遺跡に詳しいY氏らしい。

 煮立っている塩釜を覗くと、水分が蒸発してシャーベット状になった海水から、ボコボコと白いお饅頭のような泡が上がっている。その溶液を網のお玉で掬っては、隣に塩の山を積み上げる。出来上がったばかりの塩をひとつまみ舐めてみた。実に美味しい!舌にツンとくるような刺激が無い。マイルドで味に深みがある。わざわざ、鹿島灘から大量の海水を運んで、何日もビニールハウスの中に置いて水分を蒸発させ、硫酸化合物を除き、さらに、薪を一日中焚いて煮詰める。何と手間のかかる贅沢な塩なんだろう! 

 出来た塩をいただいてきた。小屋に戻る途中、この塩に相応しい料理は何だろうかとあれこれ考えた・・・。余計なものは一切加えないで、海の恵みをそのままいただくような料理がよさそうだ。蛤か鯛の潮汁なんてどうだろうか?


2018年1月2日

初詣


明けましておめでとうございます。
今年も、どうぞよろしくお願いいたします。



 毎年、初詣は山小屋の上にある龍神様と薬師堂に決めている。それらは、静かな山道を登った先にある。今ではほとんど訪れる人もいない。それでも、龍神様にはワンカップのお酒とお賽銭が供えてあって、周囲の森は綺麗に手入れされていた。まだまだ、素朴な信仰が生きているのを知って嬉しくなった。



 山道を息を切らしながら登っている間、昨夜読んだ寒山詩の一節を思い出して、何度も呪文のように繰り返し唱えて苦しさを紛らわせた。この詩の全文は下記の通り。
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「歳去って愁年を換え 春来たって物色鮮やかなり
山花緑水に笑い 巖樹青煙に舞う
蜂蝶みずから云に楽しみ 禽魚更に憐れむべし
朋とし遊んで情未だ已まず 暁に徹して眠ること能わず」

念のために、久須本氏の現代語訳を下記に紹介します。暇な方はご一読ください(笑)。
まことに正月に相応しい内容だと思う。(新暦ではちょっと早すぎるか?)

「一年は過ぎ去って、心配ごとの多かった年は改まり、新しい春が訪れて、自然の景色は実に鮮やかである。山に咲く花は、緑の水に映じて微笑みかけているようだし、岩に聳え立つ樹々は、青い春霞に舞いたわむれているようである。蜂や蝶はそれぞれ楽しそうに飛びまわり、鳥や魚は誠にかわいい。これらを友として遊んでおれば、限りなく情趣がわいて、夜も眠られずに、とうとう明けがたを迎えてしまった。」
                               (座右版 寒山拾得 久須本文雄著 講談社1995 )