先日、ある本を求めてつくば市の書店に行ったとき、たいへんな本を見つけてしまった。その本とは、以前の投稿で平出隆著の「猫の客」のことを「こういう小説が好きだ」と書いたが、同じ著者による「鳥を探しに」(双葉社2010・1)である。何と600ページもあって、しかも小さな活字の2段組である。ものすごい長さだ。値段も4千円近くする。しかし、著者の祖父が描いたという植物とキタタキの表紙の絵が、僕を惹きつけてしまった。さらに、極小さな金文字で「孤独な自然観察者にして翻訳者であった男の遺画集と遺品の中から大いなる誘いの声を聞き取りながら育った私は、いつからか、多くの《祖父たち》と出会う探索の旅程にあることに気づく。絶滅したとされる幻の鳥を求めるように、・・・・ 死者たちの語りと連携しながら、数々の時空の断層を踏破する類ない手法・・・」とあるではないか。どうしても読みたくなって、当初の目的の本などさておいて買い求めた。
それから、時間を見つけては、少しずつ読んでいる。やはり僕の直感には狂いは無かった。過去の祖父の手記や翻訳、絵画と現在の著者の状況を交互に配した構成で、詩のような散文のような文章が淡々と続いている。まだ、100ページも読んでいないので良くわからないが、小説によって事実と虚構、現実と歴史、現在と過去のズレを確認し、和解させようとする大胆な試みのように思える。この作業は、そう簡単ではないから、大部にならざるをえない。たいへんなボリュームと緻密な中身なので、「ページを抑えながら」読まなくても、当分の間は楽しめそうだ。
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