2009年4月14日

不動峠のヤマザクラ

 いつも山小屋に行くのに、北条の町から平沢官衙遺跡の脇を通って不動峠を越える。この道は、筑波山の表側と裏側を結ぶ古くからの道である。僕にとっても、この峠道は特別な意味を持っている。それは都市の生活と山小屋の生活を分ける境界であり、少々大げさに言えば、煩わしいことの多い現実の日常と夢幻のような非現実の世界とを分ける峠道でもある。

 原付バイクで、細く曲がりくねった道を神経を集中しながら走っていると、いつの間にか下界の事はすっかり忘れている。次々と展開する美しい風景や鬱蒼とした樹木の茂み、路傍の可憐な草花にすっかり心が奪われ、徐々に自分が透明になっていくように思える。峠の頂上に達する頃には、いままでとは「異なった世界」に入り込んだような感じがする。ちょうどこの季節、ヤマザクラの花が峠を埋めるころには、なおさらこの感じが強い。


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