2011年3月2日

四万騎農園を訪れる

  みなさんは、「四万騎農園(しまきのうえん)」をご存知だろうか? いつも、近くを通りながら、今まで訪れる機会が無かったが、今日は、千代田の花木センターに行く途中に、思い切って門をくぐってみた。大きなスギの屋敷林に囲まれた格調高い民家と落ち着いたモダンな建物と納屋、そして雰囲気のある石蔵。庭の中央には、浅間山麓から移植したという巨木なケヤキの株立ち。屋敷の前は見渡す限りに栗の畑が広がっている。カメラを持ってこなかったのが悔やまれる。この農園主の兵藤さんは、非常に有名な栗の生産者で、この農園は明治初年に開園して以来、およそ一世紀にわたって栗のみを作り続けてきたのである。その品質の確かさは、誰にも真似ができない。面積は、15町歩(4万5千坪!)あり、40年前から有機肥料のみで栽培して来たという。その広大な農園を、息子さんと二人で管理しているというから驚きである。僕が訪問したとき、丁度、二人が仕事から戻って来た。お茶をいただきながら、当主の兵藤さんと、樹木の話から現在のグローバル資本主義社会における農業問題や土壌を守り育てることがいかに大切かなどを、店に置いてある文献を取り出しながら、じっくりと話し合う機会を得た。その物腰、言葉使い、眼差し、そして学識の深さに、本物の篤農家とは、このような人を言うのだろうと思った。土地、屋敷、そこに住む人々、仕事、歴史・・・、すべてに統一した品格の高さを感じる。

帰りに、ここで自家製造している「マロン・ジャム(ラム)」を買って来た。クラッカーと一緒に試食させてもらったら絶品だった。ヨーロッパの料理人も絶賛しているようだ。軽く炙ったハード系のパンにつけて食べるのが楽しみである。

追記: 3月18日〜23日の間、石蔵で小林恒岳氏の日本画展がある。屋敷前の広大な栗の木の下は、季節になると一面が菜の花で埋まるそうだ。当主は「個展に合わせて咲いてくれればいいのだが」と言っていた。

確かに、ここは「特別な空間」である。


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