2021年7月14日

小砂焼

「朴訥」と言えば、先日「えびら」を求めて小河さんを訪れた帰り、少し足を伸ばして、那珂川町の『藤田製陶所』へ行った。ここ小砂(こいさご)地区では、今でも山間の鄙びた里で細々と焼物を作っている。
 小砂(こいさご)で、天保元年(1830)年、徳川斉昭によって陶土が発見され、その後、幕末には水戸藩の反射炉に用いる耐火煉瓦などが焼かれた。藤田家は、その頃からこの地で作陶している。明治に入ると、全国で三番目となる陶工の養成学校が開設されたり、舗道や車道用の煉瓦なども焼かれれた。しかし今は静かだ。当時の製陶工場や庭に敷かれたレンガが僅かに残って当時の面影を残すのみだ。
 6代目の当主、藤田眞一さんに工場を案内してもらい、当時の機械類や近くの山で採取される陶土を見せてもらった。この陶土は古い時代の花崗岩の長石が風化して粘土状になったもので、潰すと石英のツブツブが指先にあたる。これを磨り潰して陶土にするのだろう。




 記念に、コーヒーカップを買ってきた。磁器も製作したことがあるだけに、素朴だが、しっかりとしていて固くしまっている。いかにも「質実剛健」という言葉がピッタリだ。色合いは黒茶に金結晶釉や沈んだ朱色などである。一言でいえば、デザインも色合いも「古風・重厚」である。決して「若い女性」が喜ぶようなものではない。薄っぺらな「モダン」や「都会的洗練さ」とは無縁の焼物である。
 でも、それが良い。今朝、このカップでコーヒーを飲んだ。いつもより美味く感じる。久々に至福の朝を迎えた。

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