「朴訥」と言えば、先日「えびら」を求めて小河さんを訪れた帰り、少し足を伸ばして、那珂川町の『藤田製陶所』へ行った。ここ小砂(こいさご)地区では、今でも山間の鄙びた里で細々と焼物を作っている。
小砂(こいさご)で、天保元年(1830)年、徳川斉昭によって陶土が発見され、その後、幕末には水戸藩の反射炉に用いる耐火煉瓦などが焼かれた。藤田家は、その頃からこの地で作陶している。明治に入ると、全国で三番目となる陶工の養成学校が開設されたり、舗道や車道用の煉瓦なども焼かれれた。しかし今は静かだ。当時の製陶工場や庭に敷かれたレンガが僅かに残って当時の面影を残すのみだ。
6代目の当主、藤田眞一さんに工場を案内してもらい、当時の機械類や近くの山で採取される陶土を見せてもらった。この陶土は古い時代の花崗岩の長石が風化して粘土状になったもので、潰すと石英のツブツブが指先にあたる。これを磨り潰して陶土にするのだろう。
でも、それが良い。今朝、このカップでコーヒーを飲んだ。いつもより美味く感じる。久々に至福の朝を迎えた。
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