2021年7月11日

えびら作りのおじいちゃん

梅雨もそろそろ上がる頃だろう。そうしたら、「梅を干さなければ」とお隣のKさんが言う。その際に「えびら」があればとも言っていた。そこで、茂木の「えびら」作りの名人に電話した。丁度、在庫が1個だけ有るとのことだったので、早速、今日、受け取りに行ってきた。
 「えびら」とは、寒竹(オカメ笹)の茎軸を丸のまま用いて編んだザルやカゴのことである。昔はこれで梅干しや切り干し大根、干し芋などを天日に干した。水切りや風通しが良くてよく乾くし、素材がくっつかない。それにザルにカビが生えないなど食材を干すのにはピッタリなザルである。しかも頑丈である。一つ持っていれば生涯使える。
 製作者の小河 力さんの家は、茂木といってもかなりの山奥で、もう那須烏山市に近い。ナビを頼りに尋ねて行ったら、玄関先で、にこやかに迎えてくれた。年齢は87歳だそうだ。まったく、そう見えない。お茶をいただきながら、えびら作りの事をいろいろ教えてもらった。


 「えびら」を作るのは冬場の農閑期で、新月の日の朝に谷川の岸や山裾から寒竹を刈り取って来て、葉をむしり取るなどの加工をしてから、四時間をかけて編み上げると言う。その日の朝に刈り取ったものは、時間が経つと硬くなってしまうので、その日の内に編むのである。一日かけて1個しか出来ない事もあると言う。一昔前は、若い男女がひと所に集まって一緒に作った。そこでは、いろいろな話題が飛び交って楽しかったそうだ。だから、集落の誰でも作れたが、今では小河さんだけになってしまった。
















 












 こんな貴重な「えびら」を譲って頂いて、値段を聞いたら、3500円だと言う。申し訳なくて、お釣りは貰えなかった。帰り、少し先の山の中の蕎麦屋で昼食をとった。その蕎麦が、図太くて不揃いの無骨なものだったが、実に滋味溢れるものだった。隣の客も「俺も蕎麦を打つが、ここのには勝てない」と言っていた。どこか、小河さんの「えびら」と通ずるものがあって微笑んだ。



これがおかめざさ、いわゆる寒竹である。偶然、櫻川磯部稲村神社の近くで見つけた。

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