2010年10月18日

猫玉

 ピーのやつ、午後7時を過ぎると、いつも僕の長椅子の上で丸くなって眠る。熟睡していて、少しぐらいちょっかい出しても起きることはない。電球の明かりがまぶしいのか、顔を前足で覆っている。その様子が、実に可愛い。人間よりずっと野生に近いはずの動物が、こうして安心しきって眠っている姿を眺めていると、それだけで心が癒される。この小さくてか弱い生きものに信頼されているかと思うと、嬉しくなってくる。

 今、久保俊治の『熊撃ち』(小学館2009.4)を読んでいる。北海道で40年間も狩猟生活を行ってきた著者のドキュメンタリーである。僕は、これまで「罪の無い動物を殺して」生活している者に対して批判的であったが、読んでいるうちに少し考えが変わってきた。毎日のように食卓に上る「お肉」を、どこの誰がどんな風に動物を殺して得ているか全く知らないでいるほうが、よほど命を軽んじているのではないかと思うからである。雪深い森の中で、3日間も手負いのシカを追ったあげく、ついに銃でしとめ、その腹をナイフで裂き、その腹腔に凍えてかじかんだ両手を潜り込ませて温める。そこには、シカとの壮絶な命の戦いがある。著者は言う、「あのシカが生きていた価値、生きようと努力した価値は、そこから恩恵を得た私が誰よりもわかり得るのではないか」と。先日読んだ赤坂憲雄が、自然保護の原点であり、持続可能な社会を築くためのヒントは、縄文人や狩猟で生活している人々の思想にあるのではないかと言っていた意味が、少し解ったような気がする。
- いつの間にか、ピーの寝姿からとんだ方向へ脱線してしまったようだ -


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