2012年8月20日

ピーの失踪

 ピーには、ずいぶん心配させられた。夕べの8時過ぎ、小屋の前で一緒に遊んでいた後、突然、姿をくらまして、24時間を経た先ほど戻ってきたのだ。
 
 このところ体調が悪く、昨夜も熟睡でなかったせいか、うつらうつらしている合間に、べっとりと猫の真っ赤な血が床についている嫌な夢を見た。不安になって目が覚めた。いつもなら、足元で寝ているピーの姿がない。やはり、夜中になっても帰って来なかったのだ。こんなことは今までに一度もない。いやな予感がした。もしかすると、車に轢かれたか、大きな動物と戦って怪我して、小屋に戻ってこられないのかもしれない。早朝、名前を呼びながら、小屋の周りを探したが、どうしても見つからなかった。今日は、筑波山での調査がある。どうしても休めないのだ。いつまでも探し続けられないので、餌を置いて小屋を出た。

 仕事が終わり、ひょっとすると僕の留守の間に帰っているのではないかと期待して、急いで小屋に戻った。しかし、朝に置いておいた餌は手付かずのままだった。やはり、あいつに何かあったのだ。ピーが好きそうな場所を、ずいぶん探した。暗くなりかけた田んぼ道をあちこち探して歩いた。黒い塊があると、はっとする。でも、見つからなかった。歩いている途中で、「夕べ姿を消す直前に、僕の足に忍び寄ってアタックした」が、あれが最後の挨拶だったのかなと思ったら無性にさびしくなった。もう、あいつと一緒に遊べないのかと思ったら、涙がでるほど悲しかった。

 あたりは闇にすっかり包まれて、もう、あきらめかけた頃、小屋から、1kmぐらい離れた田んぼ道を歩いていると後ろの方から、聞きなれた「ミュー、ミュー」という鳴き声が聞こえる。「ピーか?」と声をかけると、黒い塊が急いで近づいてくる。ピーだった。抱きかかえると、いつものふわふわした毛並みの温かさが伝わってくる。ずっしりとした重みも感じる。ピーも、よほどうれしかったのだろう。いつもなら5分も抱かせてくれないが、ずっと小屋に帰るまで、おとなしく僕の腕の中にいた。
めでたし!めでたし!


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