2010年7月9日

マムシの話 二日目

数年前にマムシの事を書いたメモが見つかった。次いでだからブログの載せてしまおう。その後、気持ちが落ちついてきたら、やっぱり殺さなくて良かったと思えるようになった。でも、二度と僕の庭には来て欲しくない。

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「まったく困った話である。私の八郷の土地だけには、マムシはいないものと勝手に思い込んでいたが、今年の夏、友人のK君とI君が相次いで目撃したのだ。それ以来、草地を歩くときは、地面が気になって仕方がない。ガサッと動く気配があろうものなら、ビクつくようになってしまった。
 もっとも小屋のある龍神沢地区は、茨城県でも有数のマムシ密度の高いところのようだ。毎年ゲンジボタルが見られる小川の岸など、夏草の繁る所には、地元の人は長靴を履いてでもなければ絶対に立ち入らない。私も、ここのあぜ道を歩くときは、いつも緊張している。それなのに、他地区からホタルを見に来た人は、素足にサンダルで無邪気に歩き回っている。恐ろしい話である。今年の夏、事故が起こる前に注意しようと、I君直筆の絵看板を立てたが、その絵が怖すぎるほどの傑作だったのか1週間もしないうちに持ち去られてしまった。
 昨年は、私も隣の敷地で2匹を目撃した。その内の1匹は、工事の人に捕らえられ、ペットボトルに入れられて転がっていた。顔を近づけて観察しようとすると、鎌首を持ち上げた。よほど生命力が強いのか、2週間ぐらい生きていた。後日、この話を地元の人にしたら、マムシ酒を造ったのにと残念がられた。この地では、マムシ酒はいわば常備薬みたいなものでどこの家庭にもあるという。打ち身、くじき、虫刺され、乳牛の乳腺炎などの治療に、これを浸した布でシップすると効果があるそうだ。
 これほど「身近な隣人」であるマムシであるので、さぞや噛まれた人が多いだろうと思っていたら、意外と少ない。八郷でも数年に1度あるかないかだそうだ。
 実際に咬まれたことのある地元のKさんから体験話を聞いた。昭和30年代の頃、裸足で谷津田に入り、足の小指を咬まれたそうである。チクリという痛みを感じて、傷口を見たら2つの小さな穴があってマムシにやられたとわかった。急いであたりを見回したが姿は消えていた。15分ほどで自宅に戻り、昔から伝えられている通り、マッチの炎で燻したが火傷しただけで効き目は無く、痛みが次第に増してきた。当時、血清は石岡にしかなく救急車で運んで来たが、その副作用が強くて、その後、1ヶ月間も熱が出て、気分も優れず、食欲の無い日々が続いた。咬まれた足全体が腫れて黄色くなり、内出血して、マムシの斑模様と同じような紫痣がところどころに現れたそうである。聞いているだけで恐ろしくなってくる。また、Kさんは、散歩中に自宅の愛犬がマムシに咬まれた話もしてくれた。犬は顔を咬まれたので頭全体が腫れて豚のようになったそうである。放っておいたら1週間ぐらいで治ってしまったという。どうやら、人間は、犬やネコなどよりマムシ毒に感受性が高いようである。八郷在住の野口淳夫先生は、その理由を、イヌ、ネコなどの内、マムシ毒に弱い固体は死亡・淘汰され子孫を残すことができず、抵抗力のある個体だけが子孫を残した結果だと推定している。人間の場合は、「知能が高いため警戒し、かつ経験を伝達しあって咬傷をさけてきたので、マムシ毒に弱い個人も生き残った。」という。この仮説を聞いて、私をはじめ多くの人が、蛇を本能的に嫌う理由が理解できた。それほど、湿地での作業が多かった稲作文化の私たち祖先は、マムシに苦しめられ続けてきたのだろう。
 しかし、考えようでは、現在でも、マムシが生息しているということは、その餌であるカエルや小動物が豊富に生息しているということであり、それだけ良好な自然環境が保たれているという証でもある。マムシがいなくなるほど、農薬や化学物質でドロドロに汚染されるよりは「マシ」であるかもしれない。また、マムシがいるということで、人間が恐れて立ち入らないため、結果として、自然が守られているという側面もあるかもしれない。そう考えると、少しばかり「マムシと仲良くやって行くのもいいかな」という気になってきた。ただし、咬まれない限りにおいて。」   以上

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