

そんな事より、この神社が有名なのは、境内に「室の八嶋」と言われる場所があることだ。「室の八嶋」は「けぶり(煙)」、特に「恋に身を燃やしたけぶり」と結びついて、古代から、下野国の歌枕として有名である。元々は宮中の竈の煙を指した言葉らしいが、何ゆえに遠く離れたこの場所を指すのかわからない。昨日の朝霧のように、あたりの清水から湧き上がる水蒸気を「けぶり」と見立てたか。それを赴任した国府の役人が美化して都に伝えたか?
元禄2年(1689)に、松尾芭蕉も、ここが気なったらしく『奥の細道』では、最初の歌枕の地として訪れている。芭蕉は、ここで「糸遊に結びつきたる煙哉」と詠んでいる。しかし、情景の描写は無く、同伴者の曽良の解説を紹介しているだけである。もしかすると、現地を見て少々ガッカリしたのかも知れない。僕も、現地はスギ林の中の池に小社の祀ってある小島が連なっているだけで、眺めても「ア〜、こんなものか」という程度で特段感動は無かった。
大神神社にしても室の八嶋にしてもこれほどの歴史があるのに、忘れられた素朴な田舎の神社という感じであり、僕にはこれはこれで好ましく思えた。
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